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呂佳7歳。利央3歳。

母親に頼まれ初めて兄弟だけで買い物をしに家を出た仲沢兄弟。

頼まれたものは、利央がよく祖母と一緒に買いに来るケーキ屋。

そこで、家族分のケーキを買ってくる事。



いつもは祖母と手を繋いで行く道のりを兄と行く道は見慣れているはずなのに、いつもより大きくキラキラ輝いて見えた。

落ち着かない利央は、あっちこっちに行き危なっかしい。

呂佳は、友達と約束していた野球に行けず少々機嫌が悪いが、弟に怪我があっては堪らないので弟の手を引き、どんどん道を進む。



家から程近い場所にあるケーキ屋に何とか無事に辿り着き、頼まれたケーキを店員に注文した。

店内は人が多く箱に入れるまでの間、呂佳は店内の椅子に座り静かに待った。

一方弟の利央は、初めてのおつかいに興奮していてショーケースの向うに居る女店員に自慢げに話している。

余りにも嬉しそうに話す利央を気に入ったのか、その女性は利央に飴を渡していた。



「兄ちゃ〜ん!あめもらったー!」



貰ったうちの一つを兄に渡し、自分はその横の椅子に座り飴をペロペロと舐めながら、地に付かない足をぶらぶらと揺らしていた。

呂佳も渡された飴の包装を取り、口に含んだ。

少しすると箱に入れ終わったのか店員が、小さい箱を大事そうに持ち二人に近づいてきた。

お金は利央が持っているので、渡すように催促し、払い終わると渡されたケーキを俺が持つ。すると…、



「兄ちゃん、オレが持つ!」
「落とすからぜってーダメ。」
「オレオレオレー!」
「うっせーこのバカ!」



駄々を捏ねる弟の頭を一発殴り黙らせると、まだ持ちたいのか悔しそうに下唇を噛み俯いたままその場から動こうとしない。

こうなったら梃子でも動かない弟を知っている兄は、落とすの覚悟で弟にぶっきら棒にずいと弟の前に突き出した。



「落とすなよ!」
「…うん!」



やっと何時ものヘラヘラ顔に戻った利央の左手を握り、来た道を帰っていった。





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