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□Challenge!
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 々怒鳴り散らした仲沢は疲れたとでも言うようにドカリとソファに深く座った。俺は俺で手加減無しで揺すられたため脳はぐらつき、足元がおぼつかず壁に寄りかかり乱れた衣服を整えながらスーツに皺が出来たらどうする、と精一杯の悪態を吐いた。


「相変わらず面倒臭い人だよ、アンタ」
「少しは手加減することを学べゴリラ」


 ネクタイを緩め、カッターシャツを第二ボタンまで外すと深く息を吸う。白く霧がかっていた視界が酸素を肺いっぱいに取り入れることによってクリアになる。軽い酸欠状態だった脳に血が回り思考回路が開く。


 入部早々ガンを飛ばされ、言うことは聞くが反抗的で口喧嘩はしょっちゅうだったが、同世代の誰よりも飛び抜けたパワーバッティングと見た目に反したフットワークの軽さが目に止まり何かと構っていたらたったの半年の付き合いにも関わらずかなり打ち解けたと自分は思う。

 しかし、大事な弟を誑かす悪い虫と言うのなら話は別だ。いくら面倒見の良いコイツでも、さっきの俺みたいに弟が乱暴をされたら溜まったものじゃない。断固として阻止しなければならない。これは兄である俺の責任だ。


「仲ざ、」
「電話何かしてきてなんだよ。はあ?泣いてねえでしっかり話せタコ!」

 忠告の一つでも言ってやろうと思い口を開いた瞬間被せられた言葉に思わず舌打ちをしてしまう。何てタイミングで携帯を鳴らすんだこのバカは!徐々に苛立ちが募ってきた俺の拳が小刻みに震えているのに気がついた慎吾が俺の顔を窺う。


「あんのバカ!一人で火使うなって何度言ったら分かんだよ!?」
「え、ちょ、呂佳さん?!」


 電話を乱暴に切ると突然立ち上がりドカドカと音を立てて玄関へ向かう仲沢を慎吾が慌てて追いかける。居間に残された俺は、玄関で情けない声を出す慎吾の声をかき消すように勢いよく閉められたドアの音だけが聞こえた。



まだ甘えてくれるから、まだ甘やかしてもいいんだよな?



「料理失敗してキッチン燃やしたからって俺を放って弟の方に向かうか?普通」
「何だかんだ言ってもアイツも弟が可愛いんだよ」





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thank you…!!!
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