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□Challenge!
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 校に入りたての頃、俺の野球センスをいち早く見抜いた呂佳さんは何かと俺を可愛がってくれた。3ヶ月と言う短い期間だったが、呂佳さんの野球における全ての技術は、大袈裟かもしれないが今迄の野球人生を引っ繰り返すものだった。

バッティング一つとっても、相手投手の心境心理を上手く捉え、虚を突き、弱みに付け込むもので、悪い言い方だが、勝つためには手段を選ばないプレイだった。


 しかし、そのおかげで1年にして背番号を貰うことが叶い、夏の大会では呂佳さんの隣でプレイすることが出来た。結果は散々なもので、その後呂佳さんが荒れて野球から離れてしまった時もあったが、同じグランドで共に戦うことが出来た確かな思い出があることに変わりはない。そして、今では選手では無いコーチとして野球をやっていてくれていることが心底嬉しい。


「…すげー嬉しいんすけど、玄関先で喧嘩は止めて下さいよ。兄貴も。」
「ああ?だったら茶の一つでも出せ。アンタとは一度とことん話し合おうと思ってたからな。」
「お前と気が合うのは癪だが、一度締めないと分かねえようだな。…慎吾、中に入れてやれ。」


 2年前に呂佳さんを家に招いた時に二人が旧知の仲であることを知ったが、二人は何処で知り合ったのだろうか。あの時は問い詰める余裕を与えないほどの険悪ムード全開で聞くことが出来なかったが、今日こそは聞けるだろう。


「兄貴と呂佳さんって知り合いっぽいけど、先輩後輩とか?」
「同じ野球部だったって意味ではコイツは俺の後輩だが、そんな可愛い関係じゃないぞ?」
「入学式の時に一緒に来てた利央をナンパしたんだよ、コイツ。」



昔は兄ちゃんのお嫁さんになってくれるって言ってたのになぁ…



「何時の話してんだと兄貴…。」
「あの頃の可愛い慎吾を思い出して、…つい。」
「ついで俺の弟に開口一番求婚すんなよ。」





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thank you…!!!
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