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□Challenge!
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 としとと降り続ける雨と肌に張り付く生暖かい風に梅雨の時期が来たのかと嫌でも感じしまう。分厚く重たい空を仰ぎ見ては吐き出される溜息にさらに気分も急降下。何でこんな日に学校に行かなくちゃいけないのかと腹まで立ってくる。


(あっ…。)


土手から川の氾濫と一緒に川のすぐ脇にある雑草が伸び放題の無法地帯に視線がいった。いつもの倍以上も水かさが上がっていると言うのに、そこだけは頭一つ飛び出ていて異様な光景であった。


「山ちゃん何見てるの。」
「うおービックリした〜はよっす、祐史。」
「全然ビックリしてるように見えないんだけど…。で、何見てたの?」


再度質問を投げかけると、無言である一帯を指差して黙ってしまった山ノ井。なんだと疑問に思いながらもその指さされた方向に視線を移すと浮島のようにポッカリとそこだけ浮き上がった場所で目が止まった。


「(もしかしてあれを指してるのか?)……っあ。」
「思い出した?あそこ小学校の時に初めて慎吾と祐史の3人で作った基地。」
「思い出しましたおもいだしました!……あの後慎吾が蕁麻疹出して大変だったよね。」
「草アレルギー持ってんなら先に言えよって感じだったよね〜。」


まだ俺達が小学校低学年だった頃、木登りやチャンバラをやるのと同じくらい当然のように秘密基地を作っていた。祐史が良い所を見つけたと言うから着いて行ってみると此処だと教えられた。その当時の俺達はコロンブスが新大陸を発見した時と同じくらいはしゃいだが、今思えば土手の下に作った秘密基地は当たり前のように上から丸見えで秘密もクソも無かった。


「若いって恐ろしいね〜…。」
「ね〜…、って俺達もまだまだ若いんだけどね!弾けろ青春ですよ!」



どこにだって秘密基地を作れた



「じゃあさ、今度秘密基地作ろうよ。」
「え、この歳でですか。」
「うん。弾けろ青春なんでしょ?」
「いや、そうだけど…。なら海行ってナンパに勤しみましょうよ。」
「えええええええ。祐史の口からナンパなんて言葉聞きたくなかったわ〜圭ちゃんショックー。」
「えーそこまで言っちゃう?じゃあやるなら本格的に作ろうよ。」
「出たよA型。気分だけ秘密基地で良いじゃん。」





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隠れられるところは何処でも秘密基地が小学生の方程式


09,06,06


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