text

□Challenge!
28ページ/53ページ







 下が橙色に染まり、空には薄っすらと三日月が浮かんでいるのを窓から見上げて静まり返った教室までの道のりを歩く。



踵を踏みつぶした上履きをぺたぺたと小粋に鳴らしながら目的地にたどり着くと、中から数名の男子生徒の声が聞こえてきた。まだ誰か居たのかと教室の扉に手を掛けた時に聞こえてきた知り合いの名前に伸びた手を引っ込めてしまった。


「シニアの時は全然目立たねえ補欠にもなれないヘボだったんだぜ。」
「なのに高校入ったらいきなりのスタメン。得だよ、左利きは。」


扉にある小窓から中を覗くと5人の男子がそれぞれ椅子や机の上に座り談笑をしていた。放課後の教室で何をやっているのかと思ったら唯の陰口大会。

本人に直接言えないとかタマの小さい奴ら、と胸中で毒づきながらも陰口を叩かれている人物が知人のため湧き上がる感情が抑えられない。


「ちょーと失礼するよ〜。」


何処までも平静の顔を装い教室の扉を音を立てて開け放つと、先ほどまで笑っていた生徒の顔が強張り突然の乱入者に戸惑いが隠せずにいた。





「な、山ちゃん何その顔!痣だらけじゃんイッタそー…喧嘩でもしたの?」
「嫁に行った姉さんが昨日突然帰ってきてさー「浮気してやる!」ってヒステリック起こして止めたらボッコボコ〜。マジ痛いしー。」


喧嘩なら俺も呼べよ、とお気楽な祐史には昨日の出来事なんて教えてやらない。
子供の頃の遠い記憶、左利きを馬鹿にされた祐史を助けるために言った言葉は忘れない。



俺達の友情に誓って!






「祐史を悪く言う奴は俺が許さないから、そこんとこ宜しく。」





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
いつも君のヒーローでありたい


09,05,17


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ