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□Challenge!
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 が言い始めたのか今では思い出すのも困難なこの状況を、何時終わらせれば良いのかタイミングを計りかねている河合が、目の前に悠然と整列されていくドミノに視線を向ける。

 記憶の糸を手繰り寄せながら此処に至った経緯を思い出すこと3時間前。休日の部活は昼休憩を挟んで午後までやるのだが、この日は午後から突然の雨のため室内で筋トレへと予定が変更されてしまった。
しかし、午前最後に行われた全部員でのバント練習があまりにも酷かった。
 セーフティにしても犠牲にしてもバントは転がさなければいけないものを上げてしまう。理屈では分かっていても上げてしまうのは、ボールの回転に合わせてバットでスピードを殺し損ねる自身の技術や洞察力の低さからと指摘されてしまった。
「和己、昼休憩終わったら全員を剣道場に集めろ。」
「?…トレーニング室じゃなくてですか。」
「筋トレばっかじゃ身につかんもんもあるだろ。今日はゲーム感覚の練習方法だ。」
 ゲーム感覚ということに何処か納得がいかないものの、返事をすると集合と声を掛け、集まった部員達に連絡をすると皆も疑問符を浮かべながらも返事を返したので昼休憩へと入った。

「監督は何考えてんだろうな。」
「前回は、出された数字が奇数か偶数かで左右どちらかにダッシュする瞬発力を鍛えるトレーニングだったか?」
「山さんの瞬発力凄かったな。途中加減乗除が入ったのにずっと一番。」
「しかも間違えずだからな。迅も速かったけど計算が苦手で遅れを取ってた。」
部活開始10分前、剣道場への道を話しながら歩いていた高瀬と青木は、同様に雨天でグランドが使えず室内でやらされた瞬発力を鍛える練習のことを思い出していた。今回もそのようなゲーム感覚でやるのか、と着いた先で見た光景に絶句した。
青、白、黒と三色のドミノが色別に入った段ボールが何十箱も置いてあり、床には体育館で行事などの時に使われるシートがひきしめられていた。
「な、なんだよコレ。」
「何って開校記念日に伴ってドミノでもやるかって言う校長からのお達し。」
「監督!いつの間に居たんすか、てかドミノ?!!!」
「おーおー、準太は反応が良いな。あのもうろくジジイの命令だ。集中力も付くぞ。あ、忍耐も付くか?取りあえずやれ、タコ共。」



そもそも俺がドミノに参加したこと自体がこの惨劇のフラグだったんだ…



「だああああ!!また和己かああああ」
「だから俺は指が太いからこんな細かい作業は無理なんだよ!」
「もうお前やるな!一生終わらねえ気がしてきた!!」





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
指が太くて細かい作業が苦手な主将と校長嫌いな監督



09,03,16


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