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□Challenge!
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 入部員が入っての始めての合宿がG.W中に校内の宿所で行われる。食事、掃除、洗濯全てを学年分け隔てなく当番制で行い、一つの大広間で部員全員が重なり合うように寝起きを共にするため短期合宿と雖も仲間意識を高めるには十分な環境と条件が揃っていた。それを狙った監督の思惑で先輩後輩入り乱れての3つの班に分けられた部員達はその日の役割をこなしていく。そんな中、青木達1班の役割は掃除だった。
「毅彦、こっち手伝ってくれ〜。」
「っす。…和さん、燃えるゴミの袋何処っすか。」
「燃えるゴミの袋は俺が持ってるよ。燃えないゴミ、は」
構内に設置されたゴミ箱で分別されていないゴミを分け、ポイ捨てされたゴミを拾う。他の者は、宿所の廊下掃除や浴場掃除と1班でさらに人を分け食事班が夕食を作っている間に済ませてしまう。
「慎吾!濡れた服で廊下歩くな!!」
「文句は圭輔のバカ野郎に言ってくれ!俺は被害者だああああ!!」
「慎吾さんって洗濯班っすよね。」
「はあー…、どうせまた山ちゃんがふざけてたんだろ。」
なんで監督もあの2人を一緒の班にするかなあ、とぼやく河合と青木の視線の先には、部員達に罵声を浴びるびしょ濡れの島崎が廊下に水溜りを作りながら着替えのために部屋に向かう姿だった。

 合宿3日目。青木に回ってきた仕事は野菜の皮むきだった。合宿の定番でもあるカレーライスを作ると言うことで、食事当番の1班は大量の材料を切っていた。
「ジャガイモは一口大でいいっすか。」
「タケ包丁似合うな〜!すっげ切れそ、ってちょおおおおお!!?ものすげー手震えてるから?!」
「大丈夫っすよ、…男ならこれくらい」
「良いよ、もう良いから!汗酷いからねええ部活でも見たことない尋常ない汗の掻き方だからあああ」
慌てた3年の先輩に止められ、もう包丁は良いから力仕事の煮込みの方手伝ってくれ、と必死に頼まれ仕方ないと思った青木は、大きな釜に入ったカレールーを混ぜる前田の元へ向かった。前田はさほど大きくない体を目一杯使って混ぜる作業に没頭していたが、突然軽くなったおたまを不思議に思い視線を上げると"期待の新人"で有名な青木が手を貸してくれていた。
(流石未来の4番バッターだなー…片手で回しちゃうのか。)
「前ちん先輩、代わります。」
「おー頼むわ!タケは力持ちだな〜。」
「包丁は危ないからあっち手伝ってやってくれって追い出されました。」
ハハッ、と笑った前田はそうかと答えると遠くから呼ばれる声に反応するとあと頼むわ、と一言を残して何処かへ行ってしまった。取り残された青木はどうしたら良いか分からずとりあえず回しておけば良いかとひたすら釜の中を回していた。
(…そういえばテレビで蜂蜜が隠し味って言ってたな。)
思いだした青木は、素早く冷蔵庫から蜂蜜ビンを見つけると釜の中に入れようと試みようとした瞬間
「毅彦おおおおおお!!お前食事班だけは行くなって言っただろうがあああああああ」
「どうした?準太。」
「和さん!!あいつにだけは料理させちゃ駄目です!!!!」



料理なんか作ると死人が出るんだから!あと怪我人も!!



「あん時はビックリしたよな〜…。準太泣きながら悲願するんだもん。」
「本もか。すげー形相で俺に問いかけてきたときはこっちがビビったよ。」
「雅やん先輩達は知らないから言えるんすよ!ガキの頃何度死にかけたことか……。」
「体に良いって聞いたから、」
「だからって魚の肝にレモン汁、ほうれん草って殺人ジュースじゃねえかあああ!!」





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純粋な優しさが時として殺意に変わる瞬間



09,02,07


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