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□Challenge!
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夏休み最後の休日。

予定よりも早い引退で、強制的に暇になった俺の処にやってきた奴。


勉強道具とほんのばかりの差し入れのアイス、

それと通常より3割増しヘラヘラした顔を引っ提げて邪魔しに来た慎吾。




怪訝な顔で迎えた俺に対して、その締まらない表情のままほざかれた

「宿題手伝っ、」
最後まで言わせず勢いよく閉められた扉。





ほら来たこれだ。
何で俺が休みを返上してまでタコの手伝いをしなきゃいけなんだ。




確実に閉めたと思った扉だったが、僅かな隙間に足を挟み、それは妨害されていた。



「こんな処で持ち前の反射神経使ってんじゃねえよ」
「嫌々、此処で使わないと俺がヤバいんで」
「んなもん知るか」

扉を挟んでお互い一歩も引かない攻防戦
刑事ドラマの一部の様なその押し問答を暫く続けていた。



が、それすら時間の無駄だと判断した俺は、面倒臭いが家に上げてやることにした。

「…で?」
「化学教えて下さい!」


理系だから分からなくは無い…が、手間の掛かるもん持って来やがって

「はあーー…」
「んな盛大に溜息吐かないで下さいよ」
「同じ理系なら数学とか持って来いよ」
「化学以外は、平均以上取ってますんで」
(数学出来て化学出来ないのかよ…)

心底面倒臭がっている俺をよそに、ごちゃごちゃと鞄から教科書やらを出す慎吾。

(あとでラーメン奢らす)

何のラーメンにするか考えながら、2年前のおぼろげな記憶を引っ張り出して教えてやった。










「ミジンコになりてー」
「普通そこはせめてラスボラだろ」
「いやミジンコっす」
(即答かよ)

勉強に飽きてきた慎吾は、部屋にあった水槽を眺めて馬鹿な発言を零していた。

水槽には、色鮮やかな熱帯魚が居る中慎吾が選んだミジンコ。

「んな生きてんだか死んでんのか分かんねえ微生物にか」
「生きてますって」

本当意味わかんねー…
あんな単細胞の何処がいんだか

あるとしたら自分一人で新しい生物を生み出せるとこか?

いやいやいや…
それを人間やったら全く同じ顔が大量生産でドッペルどころの問題じゃねえだろ

あ、でも臓器移植の時は良いよな
"自分"だから副作用起こさねえし…






日常生活でミジンコに興味持つ人って珍しいよね



「つか続きやれよ」
「えっ、終わったすよ?」

「(馬鹿なことを真面目に考えちまった…)全部お前のせい」
「ってええええ!!?何?俺なんかしましたっけ!?」

理不尽な拳骨を一発。
腹も減ってきたからラーメン食いに行くかな

頭抑えて、目に涙溜めたやつなんか知るか






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