薄桜鬼T
□ねぇ、私を抱きしめて
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みんなと別れて、私は斎藤さんと白河城へ向かうことにした。
前日の夜も緊張と不安で胸が張り裂けそうだった。
「昨日は眠れたか?」
「あ、少しだけですが眠りました。」
斎藤さんはたぶん寝ていない。
会津に残る決意をして一番辛い思いをしたのは彼だから、不安は相当なもので。
きっと昨日だって何か考えたり仕事をしていたと思う。
だから、私は斎藤さんを出来る限り力になりたいと思ってる。
「斎藤さん、行きましょう。」
「あぁ。」
このとき、私はすでに覚悟していた。
この先に待ち構えてるものは決して小さなものじゃなくて、私達にとって全てをかける戦いになると。
だから、こうなることも分かっていたはず。
「雪村・・・!何故庇ったりした?!」
死ぬかもしれないってことは。
「・・・だって・・・斎藤さん、を、死なせたくなか、ったんです。」
「雪村・・・俺は羅刹になった。簡単には死なない。だから「だから、手出しはするな・・・って言いたいんですか?」
ああ、貴方はいつだってそうだった。
自分を犠牲にしてまで何かを達成しようとする。
それは私にとっては悲しみでしかなかった。
「私だって、斎藤さんのた、めに・・・何かをしたい、んです。」
「あんたは・・・千鶴は十分俺達に尽くした。これ以上何も望まない。」
「最後に、一つだけ・・・お願いし、て、いいですか?」
斎藤さんはひどく傷ついた表情で私を見た。
その瞳には血だらけの私が映っていた。
「最後に・・・最後に一回だけ抱きしめてくれないですか?」
「・・・一回でいいのか?」
「え?」
「これからいくらでも抱きしめてやる。だからずっと俺の傍にいて欲しい。」
なんで、そんなことを言うの?
私はもう少しで死ぬのに、流れ出る血は止まらないのに。
どうして?
「私、だって・・・斎藤さ、んといたい・・・。」
「そうか・・・。「でも、も、う無理みたい、で、す。さよう、なら。」
何か言いかけたようだったけど、私にはもう聞く余裕がないようです。
愛しい人よさようなら。
初恋の人よさようなら。
斎藤さん、さようなら。
(愛してました。)
ねぇ、私を抱きしめて
End.