薄桜鬼T

□ねぇ、私を抱きしめて
1ページ/2ページ




みんなと別れて、私は斎藤さんと白河城へ向かうことにした。
前日の夜も緊張と不安で胸が張り裂けそうだった。



「昨日は眠れたか?」
「あ、少しだけですが眠りました。」


斎藤さんはたぶん寝ていない。
会津に残る決意をして一番辛い思いをしたのは彼だから、不安は相当なもので。

きっと昨日だって何か考えたり仕事をしていたと思う。
だから、私は斎藤さんを出来る限り力になりたいと思ってる。



「斎藤さん、行きましょう。」
「あぁ。」





このとき、私はすでに覚悟していた。
この先に待ち構えてるものは決して小さなものじゃなくて、私達にとって全てをかける戦いになると。




だから、こうなることも分かっていたはず。


「雪村・・・!何故庇ったりした?!」



死ぬかもしれないってことは。



「・・・だって・・・斎藤さん、を、死なせたくなか、ったんです。」
「雪村・・・俺は羅刹になった。簡単には死なない。だから「だから、手出しはするな・・・って言いたいんですか?」



ああ、貴方はいつだってそうだった。
自分を犠牲にしてまで何かを達成しようとする。

それは私にとっては悲しみでしかなかった。



「私だって、斎藤さんのた、めに・・・何かをしたい、んです。」
「あんたは・・・千鶴は十分俺達に尽くした。これ以上何も望まない。」
「最後に、一つだけ・・・お願いし、て、いいですか?」


斎藤さんはひどく傷ついた表情で私を見た。
その瞳には血だらけの私が映っていた。



「最後に・・・最後に一回だけ抱きしめてくれないですか?」
「・・・一回でいいのか?」
「え?」
「これからいくらでも抱きしめてやる。だからずっと俺の傍にいて欲しい。」


なんで、そんなことを言うの?
私はもう少しで死ぬのに、流れ出る血は止まらないのに。

どうして?



「私、だって・・・斎藤さ、んといたい・・・。」
「そうか・・・。「でも、も、う無理みたい、で、す。さよう、なら。」


何か言いかけたようだったけど、私にはもう聞く余裕がないようです。





愛しい人よさようなら。
初恋の人よさようなら。



斎藤さん、さようなら。




(愛してました。)







End.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ