薄桜鬼V

□あなたに一目惚れをして、初めて好きを知った。
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あなたに出会うまでは、あなたに一目惚れをするまでは、『好き』を知らなかった。
ただ、他の異性より近い位置にいる相手に持つ感情だと、思っていた。
それだけの感情、そんなのすぐに消えてしまう。

何日かすればまた別の相手、次に近い位置にいる相手に恋をする。
恋なんてそんなもの、本気の恋なんて私にはできない。


ずっと、ずっと、そう思っていたけど、それは違うとあなたに出会って知った。



「千鶴、ここにいたのか。」


私の名前を呼ぶ愛しい人の声、なんだかくすぐったい。
振り向けば優しい笑顔を浮かべて、私の方に向かって歩いてくる原田さん。
私の隣にくると、空を見上げていい天気だな、なんてのんびりと言う。

私はそれに、そうですね洗濯日和です、と笑って返事をした。


「こんなところで何してたんだ?」
「え、っと・・・特に何か目的があるわけじゃないんです。ただ、ただ何となく来てみたんです。」


そう言ってみたけれど、本当は新鮮なおいしい空気を吸いたかったから。
最近部屋にいることが多かったから。

今私のいる場所には、綺麗な花がたくさん咲いている。
その花の名前は知らないけれど小さくて、淡い紫色をしている。
控えめに咲くその花は、派手な花より綺麗に見えた。


「綺麗ですね、この花。」
「そうだな。千鶴に負けないぐらい綺麗だ。」
「は、らださん・・・っ。」


さらっとそういうことを言う原田さんに私は思わず頬を赤くしてしまった、手で押さえる頬は熱い。
何回言われても、私は慣れることができない。

原田さんはそんな私を見て決まってこの台詞を言う、『本当に可愛いな、千鶴は。』と。
そして私は更に頬を赤くする。



「だから、俺はお前に惚れたんだ。お前はどうなんだ?」

そんなの、決まっている。


私は、

「初めてお会いしたときから、原田さんしか見えてません。」
「・・・熱烈な愛の告白だな。嬉しいぜ。」
「も、もう・・・っ。」


にっと笑いながら原田さんは私の唇に己の唇を重ねる。
あまりにも一瞬の出来事で、理解するのに数分掛かってしまった。

原田さんは優しく微笑みながら私を見つめる。
その笑顔に私は見惚れた。



あなたの行動一つに、あなたの言葉一つに、あなたの笑顔に、あなたの優しさに・・・。
全てに私はどきどきさせられる。

ああ、これが『好き』ってことなんだ。
今更それに気づき私は一人小さく笑うと、原田さんは不思議そうに私の方を見た。
私は何でもないですよと返事をして、原田さんに寄り添った。

私の突然の行動に少し驚く原田さんだったけれど、すぐに肩に手を回し優しく抱き寄せてくれた。
そして二人で、雲ひとつない真っ青な空を見上げた。









End.





企画『薄恋』様提出。
素晴らしい企画に参加させて頂き、ありがとうございました!
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