薄桜鬼U
□良き好敵手
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新選組には、幹部しか知らない秘密が一つある。
それは、屯所内に男装して住んでいる女の子がいるということ。
最初は皆、彼女のことをよく思っておらず殺そうともした。
しかし彼女が、新選組が探している蘭方医・雪村綱道の娘だと分かると手がかりになると生かすことにした。
一緒に過ごすうちに彼女の優しさに何度も助けられ、いつのまにか大切な存在になっていたのだった。
そして新選組の幹部の中でも特に千鶴を気に入っているのは、沖田と斎藤であった。
隙あらば、千鶴を外に連れ出し簪や結い紐を買ってあげたり、和菓子を一緒に食べたりと甘やかし放題である。
それ自体はいいことなのだが、時々沖田と斎藤が千鶴を取り合いになるというのが他の幹部にとっては大迷惑な話であった。
「千鶴ちゃんは今から僕と出かけるんだよ、一くん。早くその手離してくれないかな。」
「総司・・・昨日も千鶴と出かけていなかったか?」
「それが何だってのさ?早いもの勝ちだよ、そんなの。」
千鶴のことになるといつも斎藤は無口じゃなくなる。
それほど千鶴を気に入っているらしい。
沖田に譲るものかと、引こうとしない斎藤に対して沖田も負けじと千鶴の手を握り締める。
この場合、困るのはその間に挟まっている千鶴である。
どう反応していいか分からない。
そんな千鶴を同情する幹部たち。
だがこの二人の争いを止めることは不可能なためどうすることもできずただ、頑張れとエールを送るだけだった。
「千鶴が俺と出かけたいと言っている。」
「へえ?いつから一くんは読心術を身につけたの?」
「今だが?」
「へえ。それはすごいね。」
にっこりと笑いながら言う沖田だが、目は笑っていない。
いつもの沖田が得意とする黒い笑顔。
斎藤は特に気にすることもなく、まだなお千鶴の腕を引っ張る。
沖田も引っ張る。
「じゃあ、男らしく刀で決着つけようか。」
「・・・ああ。」
良き好敵手
(いつだって君は、僕の好敵手。)
End.