薄桜鬼U

□Call a name!
1ページ/2ページ




その日も平和な一日となるはずだった。

しかし、千鶴の一言で新選組は仲間内で大乱闘になってしまった。




「左之助さん!今日、巡察ついて行ってもいいですか?」
「ああ、いいぜ。千鶴なら大歓迎だ。」



千鶴が呼んだのは原田。
だがいつもの呼び方ではなく、下の名前を嬉しそうに呼んでいて原田も嬉しそうにこたえる。
真っ先にその異変に平助が気づき、あれ?と呟く。
そのあとに沖田も、石化していた状態から我に返り、例の黒い笑みを浮かべた。



「あれ?左之さんいつのまにそんなに千鶴ちゃんと親しくなったんだ。」
「ああ、まあな。な、千鶴。」
「は、はい!」



原田の含みのあるその笑いは、憎たらしく尚且つ妖艶だった。


しかし理由なんてどうでもよく、自分達は名前で呼んでもらったことないのに・・・と嫉妬心が現れる。
その証拠に鋭い睨みがいっせいに原田に突き刺さった。


「原田、てめえいい度胸してるじゃねえか。」
「そうそう。僕達を差し置いて自分だけ名前呼んでもらうなんて。」
「・・・抜け駆け、か。」
「・・・俺も名前で呼んでもらってるけど、さっきの会話がなんかむかつく。」


最後の平助のは完全に嫉妬である。
しかし他の者も嫉妬しているのは確実であるので、原田は楽しそうに笑った。

その笑顔に沖田達はむっとなり、一斉に原田に飛び掛る。
原田はそれを華麗によけて、平助の腕をひっぱり盾にした。

すると平助の腕を引っ張ったと同時に飛び掛ってきた土方の蹴りが見事、平助に命中。
原田は身代わり作戦を完全に成功させてしまった。



「きゃ、きゃあっ!平助くん大丈夫?!」


すぐさま千鶴が駆け寄るが完全に気を失ってしまっているため何の反応もなかった。
そんな負傷者が出たにも関わらずなお、乱闘は続く。



「抜け駆けは駄目だよ、左之さん!僕だって千鶴ちゃんの可愛い声で総司さんって呼んでもらいたいのに!」
「総司の言うとおりだな。俺も千鶴に名前で呼んでもらいたい。」
「じゃあ呼んでもらえばいいだろうが!」



原田が次々に繰り出される技を避けながらそう言うと、はたと動きが止まった。
それは綺麗に、見事に皆同時に。


「・・・最初からそうすれば良かったのか。」
「確かにな。簡単なことを見逃していたらしい。」
「あーあ、もっと戦いたかったのに。」




そう言って千鶴の元に駆け寄り、お願いします、という意味で土下座に近いものをすると千鶴はいいですよと承諾してくれた。



翌日から、沖田達を下の名前で呼ぶ千鶴の姿と呼んでもらった者がすごく幸せそうに笑う姿をよく見かけるようになった。




  
俺の、(僕の、)名前を呼んでよ!




End.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ