短編小説
□your...
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光が━━━━━━ギンとあたしを引き離す。
「……ちょっと残念やなあ…もうちょっと捕まっとっても良かったのに……」
━━━━━━嫌。
「さいなら、乱菊」
行かないで。
「━━━━━ご免な」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
悲痛な叫び声が、松本の自室に響き渡る。
「はぁッッ………はぁッッ…」
体を起こし、呼吸を整える。汗が顔を伝う。
「夢……か………」
悪夢にうなされて叫び声をあげるなんて、らしくない。
「…………はぁ………」
松本はゆっくり立ち上がり、襖を開けて自室を出た。
まだ外は暗い。美しい半月が暗闇の中に浮かんでいる。
ふと目を凝らしてみると、庭に立って月を見上げる人影があった。
「………隊長、起きてらしたんですか」
「…………ああ」
月明かりに照らされて輝く、銀色の髪。見慣れた「十」の文字。
「……眠れなくてな」
庭にいたということは、先刻の松本の叫び声を聞いていたはず。しかしそこに触れないのは、日番谷なりの思いやりなのだろう。
小さいその背中に背負う「十」の数字は、同じ隊長格でも、あいつの背負っていた数字よりずっと大きく、立派に見えた。
あいつは、自分が背負っていた数字を、あっさり捨ててしまったから。
「三」の数字を。