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□なんて素敵な世界だろう
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:What a wonderfull world!
あるとき滞在した小さな村。
そこに住む自分の子供のころにそっくりなボウズ。
俺は、俺を誘ったかつての船長のような気持ちで接した。
むず痒い思いをしながらも、夢追い人と呼ばれる海賊の危険さを説いた。
奴は理解しようとせず、無論従いなどしなかった。
そのせいで、奴は命を落としかねない事件に巻き込まれた。
たかがガキ一人。
放っておけばいいものを、何故か俺は責任を感じずにいられなかった。
奴は俺の腕の中で、緊張の糸がとけたのか堰を切ったように泣いた。
ようやく海の怖さを理解したようだ。
だがやはり従いはしなかった。
拙い口調で、相変わらず自らの夢を俺に言って聞かせた。
俺は馬鹿にするのをやめ、かつての船長の形見である大事な麦わらを託した。
受け継がれる意志、いや、遺志と言うべきか。
これからの時代を背負う子供。
奴は大泣きした。
俺は泣き声に聞きいった。
やかましいながらも心地よさを感じたほどだ。
ああ、きっと、俺が得た知識よりも彼はよりたくさんのことを体験し学んでいくのだろう。
そして俺は思う。
なんて素敵な世界だろう、と。
俺は何とも言い難い満足感を胸に、この村を去った。