MAIN3
□educe
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「あの、今なんて…」
「全くからっきしだ。
ロープの扱いは評価してんだが。」
腕組みしてぶつぶつ呟く彼。
パウリーは鼓動が嫌に早くなるのを感じずにはいられない。
額からぽたりと汗が落ちる。
これは照りつける太陽のせいではないだろう。
「やっぱりオールマイティーなんて要求すべきじゃねぇな。」
「アイスバーグさん!」
カンナを握る手に力をこめて言う。
「なんだ。」
「なんだ、って…あんまりだ。」
はじめは怒りを露にしていたが次第に勢いを失い、パウリーは叱られた子どものようにしゅんと俯いた。
「いくらなんでも酷いです…俺はあなたみたいになれるよう毎日こうやって努力して―――」
「よし、決めた。」
アイスバーグはうなだれるパウリーの肩を叩き、それこそ太陽のように熱く笑った。
「お前をガレーラカンパニー1番ドッグ、ロープ職職長に任命する。
ロープのプロとして、見習いから手練れまで統率してもらう。
同じドッグ内の職長たちと連携して、造船にたずさわってもらいたい。
こういう仕事は得意分野ごとに分業したほうが効率がいいからな。」
アイスバーグからの名誉の大抜擢をパウリーが理解するまで、少し時間がかかった。
相変わらず太陽はじりじりと輝いているが、パウリーの顔はそれに負けないくらい徐々に明るく輝いた。
「あ、あ、ありがとうございます!」
「ガレーラカンパニーの旗揚げに協力してくれ。」
「はい!」
感極まって泣き出した青年を、アイスバーグは苦笑しながらまだまだ若いな、とからかった。