MAIN2
□両手に空を、胸に嵐を
2ページ/7ページ
カクの製図机に腰掛け、長い足を組むルッチ。
「終わりそうか?」
「いいや、まだまだじゃな。
これは徹夜になりそうじゃ。」
カクはカップにふーふーと息を吹き掛け、おそるおそる湯気のたつコーヒーを飲む。
「ああ美味い。
というかなんじゃ、いきなり。
お前が話しかけてくるなんて珍しい。」
「最近な、胸が疼くんだ。
あー、人間にこの指を突き刺して鮮やかな血を見たいってな。」
「処女でも抱け。」
「どういう解釈だばか野郎。」
ルッチはコーヒーの湯気越しにぎらりと睨んだ。
「ははは、怒るな冗談じゃ。
お前はほんと、恐ろしい男じゃな。」
「自覚はしてるさ。
お前みたいに空を駆け回りゃ、このストレスも晴れるかな。」
「ああ、おすすめじゃぞ。
風が気持ちいいし、いい運動にもなるし、なにより景色が綺麗じゃ。
お前もやってみろ。」
「ふん、誰が。
カクの真似事だと思われるだろ。」
ルッチはまた一口、コーヒーをすすった。
カクもつられて、少し冷めたコーヒーをすする。