S*C Dream

□It's serious not trick.
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It's serious not trick.







「Trick or Treat!
 お菓子くれなきゃいたずら…」

「ほら。そう来ると思って、お前さんのためにわざわざ用意してやったぞ」

「…もう、せめて最後まで言わせてよ。
 っていうか先生用意してたの? つまらない」



せっかくいたずらできると思ったのに。

子供みたいに(実際子供だが)、頬を膨らませ、俺が手のひらに乗せた金色の包み紙をひとつ、ほどく。
中身は、どこにでもある何の変哲もないチョコレート。
いたずらなんて面倒だったから、一応用意はしたが、それ以上に意味なんてない。
こいつは俺の教え子で、俺は教師。
それ以上に、この関係に意味なんてない。



「ん。これ、結構おいしー」

「…お前さんもまだまだ子供だな」



あまりにも『子供』を主張するような仕草に安堵する。これくらいの距離がきっといい。
そうして、子供扱いの意味をこめて、ぽんと軽く頭を撫でる。
見上げ、見つめられた瞳に刹那、一驚する。
色濃く映るのは、深い深い、誘惑の赤。




「…せんせ。
 あのね。
 確かに私は子供だけど、女なんだよ?
 先生のことを男の人としてみてる女なんだから、
 油断してると、痛い目見るよ?」




こんな風に。




獲物を狙うような鋭い野生の瞳。
一瞬で氷付けされたように動かない体。

ゆっくりと、スローモーションがかかったように重なる唇。

至近距離で艶っぽく笑うのは、ついさっきまで(いや今だって)可愛い教え子だったはずだ。
ただの、生徒の一人だったはずだ。

どうして女ってヤツは、こうも簡単に「女」になるのか。




「……ったく、最近の若いモンは…」

「せんせーおじさんくさい。
 これくらい普通だよ?最近の子は。
 もっとスゴイ子だっているんだから」



あんなキス。かわいいものでしょ?



にっこりと浮かぶ笑みは、可愛いという言葉がぴったりのあどけない子供のよう。
多分、これから先、当分この笑顔に振り回されるのか、とそう無意識に呟けば、
返ってきたさらに上機嫌で無邪気な笑顔に、ため息を吐かずにはいられなかった。


(当分、じゃなくて、きっと『ずっと』だよ)
(…勘弁してくれ)
(やーだ。だって先生のこと大好きなんだもの)



2007.10.29

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