幽霊だとかUFOだとか妖精だとかいる世の中。
実体化するボーカロイドがあったって不思議じゃない。
Nice to meet you, My master!
世界各国飛び回ってコンサートやら、コンクールの審査員やらやっているプロの音楽家の両親。
こっちが嫌になるくらいラブラブで、毎度海外からお土産と併せてラブラブ写真が送られてくる。
もう良い年齢なんだから、せめて人前でイチャイチャするのはやめてほしい。
っていうか何より子供にラブラブ写真なんて送るのやめろ。グレるよ?
そして、つい先日そんな破天荒な両親から送られてきたのは、『初音ミク』という音声合成ソフト。
テレビや学院で話題になっていたから知っていたし、興味はあった。
でも私はパソコン全然詳しくないし、曲作るときはピアノ弾いたり、声に出して歌ったりして五線譜に書くし…。
正直、音声合成ソフトって私みたいなド素人に扱えないんじゃあないの?(確かDTMとか言うんだよね…)
しかし、油断してはいけなかった。
あの、あの星奏学院の生ける伝説とまで呼ばれた2人。(一体何やらかしてそう呼ばれてるんだか…)
両親の前では普通という考えはことごとく切り捨てられる。
「はじめまして!マスター」
「・・・はじめ、まして。」
「初音ミクと言います。
これからよろしくおねがいします!」
「…お願いされます。…」
一応私は、あの両親の娘だ。
小さい頃からファータという得体の知れないものと触れ合っていたし、実はUFOみたいなのも、幽霊みたいなのも見たことある。それもこれも全部両親のおかげで。
そういう"特殊なこと"に対して免疫が出来ていたので、驚きはするが現実としてあっさり受け入れられるようになっていた。(…なんかいやだなぁそれ)
だから『初音ミク』が実体化して目の前に現れようと、大したことじゃない。
「ミク、でいいのかな?呼び方」
「はい!マスター」
にっこり笑顔で元気よく返事。う〜んかわいい…。
私は子猫とか小犬とかファータとか、可愛いものにとても弱い。
こんな顔みたら追い出すとか絶対出来ないよ…。
…うん、決めた。ミクはこのままウチに居させてあげよう。
親睦を深めるために、まずは歌を歌うのがいいかな。
そう言うとミクはぱあっと表情を輝かせた。(うん、かわいい)
「こないだ作ったポップス系の曲が…確かー…」
木製ラックに並べてあるファイルを探って、目的の楽譜を探す。
種類無視して入れてるから、そろそろ整理しなきゃなぁ…。
「あった。はい、ミク」
意外と早く見つけることが出来た楽譜をミクに手渡す。
その曲はピアノで伴奏するような曲ではないんだけれど(一応ポップスだから)、とりあえずはピアノで伴奏しようと、ピアノの蓋をあけ、軽く指慣らし。
冷え性だからやっておかないと思うとおり指が動かなかったりする。特に冬場は大変だ。
指慣らしが終わって、ミクの方を振り返れば、なんだか不思議そうにじっと楽譜を見つめていた。
「ミク?」
「…マスター。これでどうやって歌うんですか?」
「えッ…楽譜読めないの?」
・・・…あ。そっか。本来、ミクは音声合成ソフト。
五線譜を読むんじゃなく、多分、データとして打ち込まれたものを音声にするんだろう。(詳しくないからよくわからないけど多分そんな感じのはず…)
せっかく普通の人間みたいな状態になってるんだし、五線譜の読み方とかいろいろ教えてみよう。私がパソコン使って曲作るのより早そうだし。
まぁそんなことは明日に回して今日は…
「じゃあとりあえず今日は私が歌うから、そのあとに真似して歌ってみて?
明日からはこれの読み方教えるから」
「はい、マスター!」
にっこり笑顔につられ、自然とこちらも笑顔になる。
明日は早く帰ってこよう。
そう心の中で呟いて、歌い始めた。
――――――――
[あとがき]
模造バンザイ!しかもコルダと混合!
みくみくは実物持ってないんで、模造だらけです。
っていうか実際どんな風に作るんだろう…。
続きありそうな感じで終わってますが、書くかどうかわかりません。
2007.12.29