スレイヤーズ 書庫

□Lost Memory
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どうなってるの、これ?

何処までも広がる果てしない海の中に溶け込んでいく永遠の夢。
意識が途切れて混ざり合って流されながら自分もゆるやかな流れの一部となっていく。

だけどあたしは1人海面に浮かび上がった。
1人、だなんて感覚は久しぶり。
あたしはまだ『あたし』だった。
全てはもうとうの昔に終わった筈なのに。


悪いわね。


声の主のことはよく知っている、と同時に何も知らない。
身をまかせているこの無限の海原こそ彼女そのもの。

貴方が必要になったの。

あたしが…?生まれ変わるってこと?

そうね、ちょっとある世界のバランスを調整しなきゃいけないの。

なんかむちゃくちゃ嫌な予感が…

またとんでもない面倒に巻き込まれるような…たとえば世界を救う救世主役とか?なんちゃってね。

覚えてない割に言うわね。まったくぴったりその通りよ。

をい。なんだそりは。
大体なんであたしなの?
他にもっとそーゆー役が好きそうなのが居ると思うんだけど。てか昔の知り合いに居たような。

何言ってんのよ。
やりたがるような奴じゃ駄目なの。

なんで?

自分が正しいなんて簡単に思える奴じゃ駄目。疑うことも必要よ。

それが貴方の意思…。

そうよ。
だって、ねえ分からないでしょ?
何が強いのか正しいのか本当なのかなんて。

貴方にも?

私は生み出せしもの。
いつか再び在りし日の姿に還る日を夢見続けるもの。

それはどっかで聞いたわ。

では何故私が世界を作ったと思う?

何故?考えたこともなかったわ。

でしょうね。
貴方の答えが聞きたいわ。

…案外、というかただの気まぐれだったりして?

すると中心から徐々に円を描くように、彼女の笑いが広がっていくのを感じた。

貴方達の立場で言う?
面白いわね。

まさか、当たり?

さあ
でもそれがいいわね…そういうことにしておくわ。

だったら聞きたいことがあるわ。
貴方が送り込もうとしている世界であたしは一体どうなるの?

知りたがりは相変わらずねえ。聞きたくもない話だと思うけど。
でもいいわ、気まぐれに免じて教えてあげる。

同じ出来事は二度とは起こらない。同じ存在が再び現れはしない。
変わり続けるのが存在するあらゆる者達の宿命。

新しい世界で貴方もまたかつての貴方ではない。

人間的な弱さ、純粋さ。
心にある優しさと勇気。ついでに料理上手な所とか。

一度全てをばらばらにして組みなおすの。他の素材も混ぜながらね。
出来上がった素材は別々のいくつかの存在に与えられる筈よ、必要とされる所に。

中でも貴方の魂の核を持つのが貴方達の言う“生まれ変わり”に一番近い存在かしら。

どんな…風に「あたし」は。

生きてるかって?
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