スレイヤーズ 書庫
□tear
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かろうじて人の形を保っていた姿が霧散しそうになる。
胸の穴から溢れた闇が宙に溶けていった。
「ゼロス!」
かん高い声と共に駆け寄る小さな影。
「待ちなさいよ!駄目よ、消えないで」
「ゼロス!!」
漏れ出ようとする闇を抑え込むと、見下ろしている顔をうち仰いだ。
明るい空を背にした彼女の表情がよく見えない。
「どうやら‥致命傷の一歩手前という所で済みましたね。」
いつもの笑い顔に一番近い表情を無理矢理張りつけた。
「‥こんの‥っっっ大馬鹿もん!!!!」
拳骨がくるかと思いきや、奇妙な沈黙が続いた。
「リナさん?」
不意に、頬に濡れた感触を覚えて目を開く。
「リナさん‥?」
盛大に鼻をすする音がした。
その時ようやく彼女が泣いていることに気づいた。
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