スレイヤーズ 書庫

□tear
1ページ/9ページ

かろうじて人の形を保っていた姿が霧散しそうになる。
胸の穴から溢れた闇が宙に溶けていった。


「ゼロス!」


かん高い声と共に駆け寄る小さな影。

「待ちなさいよ!駄目よ、消えないで」
「ゼロス!!」



漏れ出ようとする闇を抑え込むと、見下ろしている顔をうち仰いだ。

明るい空を背にした彼女の表情がよく見えない。

「どうやら‥致命傷の一歩手前という所で済みましたね。」

いつもの笑い顔に一番近い表情を無理矢理張りつけた。



「‥こんの‥っっっ大馬鹿もん!!!!」


拳骨がくるかと思いきや、奇妙な沈黙が続いた。


「リナさん?」


不意に、頬に濡れた感触を覚えて目を開く。


「リナさん‥?」


盛大に鼻をすする音がした。


その時ようやく彼女が泣いていることに気づいた。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ