スレイヤーズ 書庫

□Somewhere
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肩の上に乗っている頭の重みが現実を強調しているようだった。
そしてこれも後になって思い出した事だが、寝息が聞こえた。

当たり前みたいに。
すぐそばに居るのがただ当たり前みたいに。






「‥‥どぇぇええええ!!!」

勢いよく上体を起こすと肩に硬いものがゴチンとぶつかる音がした。

あたしは構わずにシーツを身体に引き寄せる。
わなわなと手が震えていた。


窓から逃げよう。
今すぐ飛んで逃げよう。
いや待て証拠を抹消してからじゃないと‥。

しょうこ。




「朝から元気がいいですねえリナさんは。」



ぎく。

ぐきぐきと振り向くと、中間管理職魔族が顎をさすりながらニコ目でこちらを見つめていた。

「お早うございます‥ところで何で頭を抱えてブツブツ言ってるんですか?」

すると急に哀願するような目つきで見上げてくるリナにゼロスは首を傾げた。

「ねえ‥何にもなかったの、よね?」

「何にもって事はありませんよ。昨夜だって」

「だあああああもういいから!言わないで!」

必死にかぶりを振るリナの様子がどうもおかしいとようやく気付く。

「今日のリナさん変ですよ?具合でも悪いんですか?」

心配そうに顔色を伺う彼に驚いて身を退いた。

「どうしたんです。」

更に詰め寄るゼロスから逃げるように壁に背中を押し付ける。

「あんた‥何あたしの心配なんてしてんのよ。気持ち悪い‥って、うひゃ!」

「少し熱があるかもしれませんねぇ。」

冷たい手が額にあてられる。自分の額にも片手をあてて計り比べているのがやたら人間くさい。
何なんだろうこの状況。魔族の陰謀?
それとも仲間が仕掛けたドッキリ?

ぐるぐると考えを巡らせている内に、ふとシーツの上から押さえている感触がいつもと違う事に気付く。
重みがあるというか、奥行きがあるというか。

まさかとは思うけど‥

軽くシーツを持ち上げて覗き込んだ瞬間目が点になる。

お‥大きい。

アメリア級とはいかないが昨日までの彼女の胸のサイズと比べればその差は一目瞭然。

「〜〜これ、あたしの身体じゃない!!!」

「ちょっリナさん!?」

じたばたと暴れるリナをなだめようとゼロスが後ろから羽交い締めにした所、また顎に肘鉄を喰らう羽目になる。

「やれやれ‥」

仕方ないというように振り上げた左手でリナの首元にすとんと一撃を喰らわせる。

ずるずると崩れ落ちた身体を抱えて、ゼロスは大きくため息をついた。

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