スレイヤーズ 書庫
□feel well
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「‥の魂すらも打ち砕き!!」
心底驚いたという顔のゼロスをあたしはざまあみろと笑う。
あの時、ドラグ・スレイブの呪文は完成してはいなかった。
あたしは途中で詠唱を止めて術を投げ出したのだ。
代わりに別の呪文を唱えて待っていた。
唯一ゼロスに致命傷を与えることが出来る呪文を。
不意に闇の刃を突き立てた体が薄らぐ。
逃がすか!
心が、魂がバラバラになりそうな感覚の中あたしは力を振り絞った。
‥イ。
もう誰を守りたかったのか思い出せない。
その顔はぼやけて見えない。
「それでも、大切なのよ!」
一際巨大に膨れ上がった闇は空間をえぐりとり、文字通りその空間を滅ぼした。
そしてあたしは膝をつきそのまま仰向けに倒れた。
もう何も、感じなかった。
そう、あたしはいつも生き残るために戦ってきた。
たとえ勝てる確率が100分の1、1万分の1でも。
だからあたしの性格をよく知っているゼロスは今回もあたしが「死なない」戦いを仕掛けると踏んだ。
だけど、あたしはあたしが死んだ時にガウリイがどうするか考えた。
‥彼はゼロスを追うだろう。そして降りかかる火の粉を払うために力を奮うのをゼロスがためらう理由は、無い。
自分自身ですら予想外だった。
戦いを始めた時既にあたしは自らの命を見捨てていたのだ。
守っていたのはガウリイの命だった。
ねえゼロス
人間って本当に愚かな生き物かも知れない。
あたしは自分のこの愚かしさが愛おしい。