スレイヤーズ 書庫
□feel well
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最後にあいつと何話したんだっけ
そうだ、部屋の前でいつもと同じように振り向いてじゃあ後でって言って別れた。
あたしちゃんと笑ってたわ。
良かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
切り立った岩山の麓に小さな町がある。
一軒しかない宿を出て森を抜けると見晴らしの良い平原が広がっている。
夜も深まる時刻。
あたしは森の出口でゼロスと向かい合っていた。
「お仲間を呼ばなくていいんですか?」
「いいのよ。」
「僕は構いませんが、後で恨まれると思いますよリナさん。」
ぽりぽりと頬をかきながら呑気そうにしゃべる獣神官を見据える。
あたしに“殺される”気がなく、戦おうとしているのを見てゼロスはおかしそうな顔をする。
「それとも、死にゆく貴方には関係のないことですか?」
「エルメキア・ランス!」
あたしが投げつけた呪文をゼロスは前に突き出した指一本で防いだ。
この程度の術では牽制にもならない、ということか。
「来る気がないならこちらから参りますよ!」
一気に距離を詰めると、首元にヒヤリとした感触を覚えて背筋が凍りつく。
「ぐ‥かはっ」
掴んだ首を振り回す形で岩壁に叩きつけられたあたしは大地に赤い血を散らす。
弄んでいる。
彼は魔族の本能そのままに獲物をなぶり殺すつもりだ。
「考えたんですよ。」
さくり、と地面に杖を突き立てる音がする。
「貴方とは長い‥といっても僕からすれば僅かな時間ですが、ともあれ浅いとは言えないお付き合いでしたし早く楽にしてさし上げた方がいいかとも。」
「けれどリナさんはそんなのは嫌でしょう?」
見上げると少し先で笑みを浮かべたゼロスが待っていた。
あたしが立ち上がるのを。