スレイヤーズ 書庫
□tear
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キラキラと氷の粒が頭上に降り注ぐ中、彼女の声を聞いた気がした。
馬鹿ゼロス。
意気地なし!
「貴方が好きだったんです。貴方が誰を好きでも僕は貴方が好きだったんです、リナさん。」
今更だと思いながら初めて真実を口にする。
ふと、杖を握った手から力が抜けていくのを感じた。
見ている内に指の先から闇が吸い上げられるように虚空へと溶けていく。
カラン、と杖が地面に落ちてそれも闇に還り消えた。
「これは‥」
明らかに自分とはかけ離れた上位の力。
抵抗すら許さずに全身が急速に削り取られていく。
「獣王様のお力ではない‥!」
他の魔王やその腹心のものでもない。
奇妙な安らぎさえ感じさせるこの力は
「あのお方の‥ご意志ですか!」
既に右半身をほとんど失ったゼロスはぐらり、と膝をつく。
「これは天罰ですか?それとも」
「憐れみなのですか‥?」
全てが金色の海へとたゆたいながら流れていく中、最後まで残った意識は少女の面影を追った。
それは手を伸ばせば届きそうな程に近かった。
思わず触れようとした指がリナの手を掴んだ。
変わらない笑みが眼前にあった。
馬鹿ね、あんた。
本当大馬鹿だわ。
ねえリナさん‥
何よ!
好きですよ。
そして彼女は優しく微笑んだ。
(fin…)