スレイヤーズ 書庫
□tear
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一年中雪に閉ざされた高山の一角。
吹雪が届かない厚い雪の層の下にそれは静かに埋もれていた。
杖に埋め込まれている宝玉が赤く眩しく照らし出す。
凍てついた氷の中に浮かぶ2人の人間。 一方が他方を庇うように両手で体を覆っている。
ゼロスは開いた瞳で氷の内側の更に2本の腕の内側に居るリナを見つめた。
「貴方ともあろう人がこんな」
さくり、と足元の雪が音を立てる。
「こんな所で」
手を触れた氷は硬く、冷え冷えとしていていた。
「随分と笑わせるじゃないですか。」
ゼロスの口元はいつになく歪んでいた。
長い間人間のフリをしてきて今、急に表情を見失ったとでもいうように。
食い入るように見つめた先には在りし日と変わらぬリナの姿があった。
腕の中で彼女は静かに瞳を閉ざしていた。
まるで怖いものなど何もないという風に。
そこに怯えや不安の欠片でも見いだすことは出来なかった。
歯を食いしばって杖を振り上げるとゼロスは叫んだ。
「彼は貴方を守れはしなかった!」
滑稽だ滑稽だこんな
「貴方がた人間は子供を作って彼等が力を引き継ぐのですか?そして短い生を終えて、それで満足なんですか!?」
「僕が隣に居たなら‥」
滑稽なのは自分だ。
「リナさん貴方は」
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