スレイヤーズ 書庫

□tear
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「気持ちいいですねえ。」

人間くさい台詞を吐きながら獣神官は川べりの草原に寝そべって風に前髪を吹かせていた。

こんな日はかつて仕事で関わった顔ぶれを思い出す。

アメリアのあの性質は変わっていないだろう。もしかしたらゼルガディスが隣に居るのかも知れない。
フィリアが育てている少年は今もまだ少年の筈だ。彼が大人と呼ばれるようになるには長い年月が必要だろう。
そして‥

「あの2人は未だ旅の空の下、といった所でしょうか。」

最後に会ったのがかれこれ10と5年前。
明るく別れを告げて駆け出した姿はまるでまた直ぐに会えると、そう言っているようで。

「会いに行ってみるのも一興ですかね。」

何でもないように言いながら実現することは無いのだ。

目を閉じて再び寝転がったゼロスの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。


「なにとぞ命だけはお助けをーー」

「やかましいっっっ悪人に人権はないの!
ファイヤーボール!!」

ちゅどーーんと森の中で爆音が響き、木々から鳥達が舞い上がる。

「ふー手こずらせてくれちゃって。兄ちゃんとはぐれちゃったじゃない。」

金品を覗かせた大袋を背負って森から出てきた少女と目が合った。


「リナさん!?」


少女はぱちくりとまばたきをするとゼロスを見つめる。
あの頃と変わらぬ眼差しで。

そうして彼女は答えた。

「あたし‥リナじゃないわよ。それは母さんの名前。」


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