ガンダムSEED部屋

□Can't you see my face?
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一見、何ら見た目に変化のないお腹ぬくもりを与えるように撫でながら


「キラ。」

小さく呟いた。




自分が女だと意識した事なんてなかった。

ギルに引き取られた時に、男として戸籍を作った方が軍に入る上で何かと都合がいいからと言われて以来、男物の服を着て、男のように口をきいた。

別段、違和感も感じなかったし

ギルがいいと言うなら、その方がいい。

男で、いい。




だから子供が出来たかもしれない、と考えた時どうしようもなかった。

普通の女並に驚いたり、怖いと思ったり、まして喜ぶ事なんて出来やしなかった。

何も出来なくて‥分からなくて‥。またいつものように冷静になっている自分が嫌で、ただ

「キラ。」

父親の名前を貰ってこの子の名前はキラにしよう、そう思った。

この子は受精卵とか胎児とか、絶対にそんな風に一度も呼ばせたりしない。

生き始めた瞬間から「キラ」という名前で生きるのがいい――。



誰よりも温かくて優しい人の名で。









自分よりも少し色黒の、大きな手に白い手のひらを重ねる。


「もう少しだけ‥」


あとどれだけ時間が残されているのかも分からない。


「傍に、居させて下さい。」


そう言ってキラの腕の中に滑り込んだ。



“家族”なんていう言葉はまだあまりに遠すぎて、曖昧で

今のレイには届かなかった。



ただキラの体温に包まれて自分の体に宿る小さな命を感じていると、


「キラ」だけは悲しい目に合わせたりしない‥


そんな想いが強くなっていく。




実験道具にされた悲しい玩具たち。




「キラ」を守るから――‥。





温かい輪の内側で、今は穏やかに目を閉じた。











(fin…)
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