スレイヤーズ 書庫

□無題
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もう会えないの。

もしも会えたら?

だから会えないんだってば。

それでも、会えたら?

‥会いたい。









「リナさん」

「なんであんたがここに居るの?」

「あなたの夢の中だからですよ。」

「夢?ここは‥」

霧にかすむ風景。
どこからか水音が聞こえる。
足元に広がる荒涼とした大地にはそこかしこに崩れ落ちた廃墟ばかりが目につく。


「サイラーグ‥。」

しんしんとした寂しさが辺りを支配する。

髪をひるがえして見渡した風景の中に、当たり前のようにゼロスが笑いながら立っていた。

「あたしの記憶の中の、ね。」

ぽつりと呟く。

シルフィールの知らせによれば、今は新しい建物も少しずつ増えてゆき、街は徐々にではあるが再び活気を取り戻してきているという。

けれどあたしにとってサイラーグは‥この街はあの時のまま、冥王フィブリゾを倒した時のままの姿だった。

「ガウリイが帰ってきたと思ったら、あんたとはバイバイなんてね。」

しゃがみ込んで膝を抱える。
引き抜いた草の感触が妙にリアルなのが不思議だった。

「分かっていたことでしょう?
貴方にも僕にもお互いの立場というものがありますからね。」

何気ない風に傍らに立ってあたしが1番聞きたくない言葉を吐く。
知らず知らず口元に苦笑が浮かんでくる。

「あんたもあたしの記憶なんでしょ?」

ぶち、と悲しい程手応えのない枯れ草を引き抜く。

「だったらどうして‥」


ここは墓場だ。
死霊都市の名のままに朽ち果てさせておけばいい。
触れずにそっと眠らせて

あたしの想いと共に。



「夢の中でもあんたは変わんない。」


不意に喉の奥から熱いものが込み上げてくる。


「何も変わらない。」


あたし達の関係は。


「あんたがただの幻なら消えて。
もう思い出させないで。」

ぽたり、と落ちた雫が草むらの中に光って消えた。

かまうものか。
どうせ彼が知ることはない。
本物のあいつは。





「ひとつは貴方が望んでいないからでしょうね。」

不意にすぐ背後から声がしてびくりと肩が震える。
開いた掌から黄色い草の葉がこぼれ落ちた。


懐かしい気配。
背中越しに感じる息遣いと低い声が胸をかき乱す。

「貴方は自分に都合のいい僕なんて期待していない。そうでしょう?


薄暗い空を見上げながらゼロスは淡々と言う。

「じきにまた会えます。
風向きが変わろうとしているから。」



「“また"仕事なの?」


「そうですね。
内容は言えませんが。」




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