ゴミ詩T

□秋、空、君
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【秋、空、君】



僕は夕焼け空の下を走っていた
息を切らしてもまだ
頬を掠る落ち葉が痛いくらいの速さで

これと言って理由などなかった
ただ、儚げな秋の匂いがするあの空
それを見ていたら走りたくなって

赤い血を流している夕陽に追われているような
そんな錯覚が僕を襲う
逃げても逃げても離れられず
青春とは反対の東に向かって走る

風の音は聴覚を奪い
かつて聞いた君の声など忘れてしまう
自分の息遣いすら空気に食われた

身に凍みる寒さが孤独を突き付けるよう
ああ、君はもう居ないんだなって
いらない現実が僕を抱く
その囁きは風の音となり

走って走って辿り着いた秋の海
君の名前を叫ぼうと息を吸ったけれど
僕は呼べる名前などもってなくて
口をポカンと開けたままの間抜け面で
秋の空を見上げて立ち尽くす僕を
夕陽はユラユラ笑っていた




 

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