poem

□二十一歳の虚無論者
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【二十一歳の虚無論者】



別に飢えてるわけじゃない。
世界水準で言えば大分幸福で、人並みに愛もあれば生活する金もある。
繰り返しの毎日が退屈なわけでもなくて、それなりに刺激というものもある。
家族にも友達にも恵まれ、幸いにして顔も頭もそれほど悪くはない。
ありきたりな人間、ありきたりな生活、ありきたりな幸福。
なんて恵まれた人生!
さて、問題視すべきは渦巻く破壊衝動。
いいや、そんな高尚なものですらない、ただの虚無感。
全て無くなってしまっても構わない、そう、諦観にも似たこの感情は所謂云々、要するに「何も楽しくない…」。
価値ある日常の価値が解らなくなり、今までの人生を振り返っては、ああまだ先は長いと嘆息する。
死にたいと思うわけではないが、特に生きたいとも思わない。
この虚しさを如何にすべきか、恐らく病気だと言われても納得いかないだろう。
自分にとっては至極当然のことで、単純に人生のスランプに陥っただけだと思い込む。
夢を見るほど餓鬼でもなければ、妥協するほど老成してもいないので、宙ぶらりんになった欲求不満だけが物言いたげにゆらりと揺れる。
たまに人や世界を傷付けることに優越感を覚え、犯罪や害に魅せられる。
悪いことが格好いいと思ってる馬鹿な時期は通り過ぎたから、この感情を「ヤンデレw」なんて言ってみれば少しは可愛く見えるのか。
だが実際に手を下せるような間違った勇気もなく。
人生とは得てして空虚なものだ。
想像だか妄想だかで人を害したところで、この手は血に濡れることもなければ、手錠がかかることもない。
そのことにまた虚無感を覚え、今日も一人堕ちて行く。
堕ちた先が何処かと言えば、やっぱり此処で。
前進なのか後退なのか停滞なのか、空っぽの精神で彩ったところで、結局望ましい答えは出ないのだろう。
寂しい人生だと思うか?
無意味な一生だと思うか?
そんなこと言えはしないだろう。
それは、人間誰しも心から充実した生活なんて送っていないから。
覚えがあるだろう?
そう、私は君だ。
ハロー、六十五億人目のニヒリスト。


 

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