poem

□*〜黙祷物語〜*
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【*〜黙祷物語〜*】



彼女はただ俯いていた
心無い硝子玉 光らない硝子玉
真っ黒な絵本に小さな染みをつくって

得体の知れない生き物は嘲笑い
その容れ物の中を楽しそうに走り回る

永い夜は手を広げて君を待っていた
彼女はただ俯き 短い夜に嘆いていた
硝子玉は動かず 時を支配する

揺り籠の中で悲痛の声を上げた
羽化を知らない幼き蜉蝣

地上の天使は残酷な呪文を彼女に唱えた
そして魔法にかかり人形になった哀れなお姫様
王子は深い眠りの中

追憶は忌まわしき幻想
刹那に縛り付ける悲しき悔恨

杞憂を逸した彼女の英断
蜉蝣は静かに目を開き 優しく閉じた

蜉蝣を抱いた綺麗な人形
小さな寝息をたて始め 人形は一度微笑み壊れた

王子と姫は永久の物語の中
目覚めればそこは廃墟の楽園
二人の幸福は楽園の最果て きっと

硝子玉から零れた 終焉を飾る一粒の星
絵本は人知れず表紙を閉じた


 

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