ゴミ詩U

□知逝姫
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【知逝姫】



「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?」

そこには私が映った

鏡は嘘を吐かない
いつも真実のみを映し出す 至極単純な無機物

私は絶世の美女
誰も堕とせはしない

紳士的で白馬に乗った王子様は私の好みじゃない

生産性の無い小人達は玩具にもならない

名も無き狩人なんかじゃ私を見付ける事すら叶わない

私は絶対唯一私だけの絶世の美女
唇も初めても誰にもやらない

ある日魔女(ママ)が来て果実を差し出した
それはクソみたいに不味い 幸せと名の付いた実
甘い毒林檎なんて今時流行んない
その実を平らげて私はまた美しくなる

「鏡よ鏡…」
自分を映したら 透明な絶望色に染まった顔があった
醜さに指を差して笑ったら 酷く歪んだ笑顔が浮かんだ

そのあまりの醜さに幻滅し 全て真黒い幸福色で塗り潰したら
鏡は崩れた

床には不敵に微笑む破片
そっと近寄り覗き込む
ああ そういうことか
私は最初から知っていたのだろう

「鏡よ鏡、この世で一番醜い物はなぁに?」

そこには紛れも無く私が映っていた




 

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