for you01
□君の為に。
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飲み屋で口にするのは、いつも決まった名前だけ。
アイツは〜なんて言いながら顔は満面の笑み。
楽しそうに話す君が好きだから……。
自分の名を呼んでくれなくても満足できる。
そう思ってた。
でも……
「……どうして…好きになっちまったんだろ〜な……あんな奴」
「…銀さん……」
小さな声でそう呟いた。
胸が……痛い。
「ねぇ……こんな俺を軽蔑する?」
酔ったからか、妙に色を含んだ目付きで俺を見上げる。
「そんな事……」
「優しいねぇ長谷川さんは……」
名を口にされるだけで跳ねる心臓。
──重症だ……。
落ち着かない心を隠す様に
グラスを傾け酒を煽る。
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