庭球夢処
□片恋
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全国大会も終わって3年が引退し、新しい部長・副部長が決定した。
もちろん新部長には俺が選ばれた。
新学期が始まって早2週間が経過した今日も、引退したはずの先輩たちはフツーに部活に来ていた。
放課後、部室の扉を開くと着替えを終えた白石先輩が居た。
大会前と変わらない見慣れた光景に、眉を寄せる。
「なんや財前、せっかく先輩が練習見にきとるんに、そんな渋い顔して」
『毎日毎日顔出されとったら、ありがたみなんかないっスわ』
見飽きた顔に辟易しながら悪態をつく。
白石先輩は、そんな俺の態度には慣れたもので、俺の肩をたたくとコートで叫んでいる金ちゃんの方へ歩きだした。
ジャージに着替えるため、部室の扉を閉めた。
ランニングを終えて、コートに入る。
コートの周りはいつのものように大勢の女子生徒の姿。
その中にクラスメイトの姿が見える。
その視線はコートの中の謙也先輩に向けられていた。
(なんやねん、えらいむかつくわ)
先輩らが引退して、ようやくあの横顔を見ることがなくなったと思ったのに・・・。
今日も飽きずに部活に顔を出した謙也先輩をにらみつける。
「財前、怖い顔しとるなぁ」
『白石先輩』
「あかんで?謙也は一応先輩やねんから」
『わかっとりますわ、そんなこと』
謙也先輩には一生勝てないことも。
嫌なほどに。
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