夢、貴方、愛。

□街角ハピネス
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「…ふふっ」

「…何だよ」

いきなり1人で笑い出した私に、土方さんの視線が刺さる。



「いえ…昔の事を思い出して」

「あ?」

「私が初めて土方さんを好きだと思ったのはいつかな、と」

「…はぁ?」


鬼の副長と呼ばれる彼らしからぬ、腑抜けた声だった。

天気は快晴。
街は平和。

見回りの最中こんな事を考えている私は不謹慎だろうか。

…まぁ堂々と居眠りする沖田さんよりはマシだな。

「何を言ってんだ、お前は」

「だって何かきっかけがあった訳でしょう?土方さんを好きになるのに」

いつも通り煙草をふかす土方さんは、溜息をついて私を見た。

たった今通り過ぎた電信柱には歩き煙草禁止の張り紙が張ってあった気がする。


「…どうでもいいだろそんな事」

「よくないですよ!そんな事って!!失礼な!!!」

「何でキレんだよ」

「そりゃキレるでしょうよ!!」

あ。今通り過ぎた電信柱にも張り紙。


「ここ歩き煙草禁止ですから!!そりゃ私じゃなくてもキレますよ!!」

「意味分かんねぇよ!!話ずれてるぞ!!」

「じゃあ土方さんは」

「…ってオイ!!いきなり普段のテンションに戻ってんじゃねぇよ!!」

「落ち着いてください。…で?土方さんは何故私の隣にいるんですか?何故…私を好きだと思ってくれたんですか?」



そう。何かきっかけがあったはず。

土方さんは頭をガシガシ掻きながら、煙草をくわえたまま言った。



「…好きだから、好きだと思った」


「…え?」


「俺がお前の隣にいる理由なんて、それだけだ」




よく考えてみれば文法的におかしい文かもしれない。

短すぎてよく分からない文かもしれない。


でも。

私にはその言葉が全てで。



「十分です。…それで…十分です」

「…そうかよ」



自然と緩んでしまう頬は、自分ではどうしようもなくて。


あぁ。そうだ。

私は、きっと。




「私は…刹那に犯されてるんです」

「は?」

「私は、身も心も…刹那に犯されてしまいました」


土方さん。

私は

貴方の



一瞬一瞬に。


恋をしたんです。

きっかけなんて、なかったのかもしれません。


「刹那に犯された、私の想い」

「…あ?何か言ったか?」

「…いいえ。何も!!」




敵を射抜くその視線に

仲間を想う不器用な優しさに

何も恐れない真っ直ぐな強さに


貴方が生きる         
全ての瞬間に

私は、恋をしました。



私の視界の隅にはやっぱりあの張り紙。



「土方さん。そろそろ禁煙考えたらどうですか?早死にしますよ?」

「あぁ?ニコチンにやられる程俺の肺はヤワじゃねぇんだよ」

「何の自信ですかそれ」




天気は快晴。
街は平和。


いつも通りの日常に、

貴方という幸せが咲く。




fin.
 

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