颯爽デイズ
□近付く壮絶ライフ
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目の前で微笑むツナさんはとてもマフィアのボスになんか見えない。
…いや私マフィア界の事なんて全く知らないし実はこういう柔和そうな人がボスっていうのが相場なのかもしれないけど。
「…それはないか」
「ん?何、どうしたの陽呂ちゃん」
「…いえ」
ここでもしツナさんってマフィアに見えませんよねー!とか言ったら私どうなるんだろう。
ははっ、そうかな?なんて笑ってくれりゃいいけどあぁ?てめっ嘗めてんのかゴラァみたいな展開とかになったら嫌だ。もの凄く嫌だ。
嫌だっていうか私死ぬんじゃなかろうか。
「何でも訊いてよ。これからはここで働くんだしさ」
「…いやいや本当に。何でもないです」
「変な事訊いて俺がいきなり暴君にキャラ変しちゃったらどうしようとか思ってる?大丈夫だよ俺そんな小さい心じゃないし」
「自分で問題定義して解決までもっていっちゃう辺り只者ではない!それ私の心の中の出来事!」
「えっ?」
「そのキョト顔やめてくれません?色々不思議なのこっちの方だわ!」
「えっ?」
「あああ超絶ラビリンス!」
「ははっもう陽呂ちゃんて面白い子だね。キャラ変の心配した方がいいのは陽呂ちゃんの方なんじゃない?」
「否定しきれないのがとても悔しい!」
「いと悔し、だね」
「…は?」
「ほら、さっき陽呂ちゃん古典が得意だったとかぬかしてただろ?中学ぐらいで習わなかった?とても=いと、って」
「すみませんぬかしてたとかやめてもらえます?段々とツナさんまでもが扱い雑になってきて私泣きそう」
「お前はイタリアに何しに来たんだよ。ツナにツッコむ為にわざわざ海渡って来たのか?馬鹿か」
「初対面のマフィアに貶されるためではないって事は確かですけどね!」
大人しく口を閉ざしていると思ってたリボーンさんが突如一撃を喰らわせてきた。
言葉のね。
言葉の鋭利な刃物ってやつをね。
ここで頑張ってみようと決めた私だが、やっぱり不安なものは不安だ。
何より問題はこの始終にっこり構えているツナさん。
彼の温かい雰囲気や真剣な眼差しを信じてみようと思った、のはいいんだけど。
どうも怪しい。
何かがおかしい。
何かが、不自然。
「笑顔が胡散臭いだなんて失礼だなぁ、陽呂ちゃんは」
「待って待ってそこまで言ってないでしょう…しかもまたそれ私の頭の中の出来事…」
「言っておくけど別に俺人の心が読めるわけじゃないからね?全部陽呂ちゃんの顔色がそう言ってるだけ。だから単純な子は好きだよ」
「愛情表現が毒々しいわ!」
私をここに連れてきた張本人がこんな具合で、私の未来はどうなるんだろう。
これじゃ本当に味方がいない。
超アウェイ。
「ツナさんよりもっと話が通じる人はここにいるのだろうか…」
「俺、この屋敷の中では一番まともな人間だっていう自信があるけど」
「私の微かな希望を木端微塵にしないでくださいよ」
「だって無駄に期待させるのも悪いかなって」
「その発言がここが異常者の溜まり場だってリアルに感じさせますね。辛いです」
冗談じゃなく、私は心底まずい場所に足を踏み入れたのかもしれない。
何が怖いって、無事に日本に帰国する自分の姿が全く想像出来ないのが恐ろしい。
イタリアに来て私は一体何をしてるんだろう。
そりゃ昔から色々と運は悪かったけどまさか己の不運っぷりがここまでとは。
最早才能としか思えない。
寧ろそう思わなきゃやってられない。
100人に問いかけたら100人がこんな才能いらねぇよばーかって思うだろうけどね。
「とにかく…これ以上精神的に追い詰めてくる人でなければどんな変人でも構いません。どうか非攻撃的な方々でありますように」
「とか祈ってるところ申し訳ないけどね。あそこ。見て、陽呂ちゃん」
「え?」
ツナさんが指差したのは大広間の入り口の方。
「どうしても集まれだなんていい度胸だね、綱吉。僕に指図するなんてとうとう命捨てる気にでもなったのかい?」
「まぁまぁ。落ち着いてよ恭弥さん。それにいつも俺の司令で動いてるんだし今更でしょう?」
「煩い。僕は君に従ってるわけじゃない。いつだって自分の意思で動いてる。余りふざけた事言ってると咬み殺すよ」
そこに立っていたのは、腕を組みながらこちらを睨む和服の男性。
「残念だったね、陽呂ちゃん」
「…かみ?…ころ…?え?」
ツナさんはまたもやにっこりと笑う。
「非攻撃的どころか、超攻撃的な人のお出ましだよ」
どうやら私の運の悪さは異国の地でも存分に発揮されるらしい。
(それと、獄寺と山本一緒に来させるのやめてくれない?煩くて仕方がないよ)
(あ、逆効果だったか)
(一方的に獄寺が喚いてるだけだけどね)
((隼人には指導が必要、と))
((かみ…かみころ…?))
<10‐近付く壮絶ライフ‐> Fin.