颯爽デイズ

□ある女の決意
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私が働く場所はどうやらマフィアのアジトらしい。何なのこの展開。

マフィアって人種?職種?が実在するなんて考えた事も無かったし、ましてや自分の職場になろうなんてだれが想像出来ただろうか。いや、出来ない。私漢文は得意だから反語だってお手の物なんだから。




「試験ではいつもいい点数取ってたんですからね!古典!」

「どうしたの陽呂ちゃん。ご乱心?」

「そりゃこんな展開になったら誰だって心ぐらい乱れるわ!」



にっこりという音がつきそうな程素晴らしい笑顔を向けてくるツナさんの隣では相変わらず鋭い視線で私を睨むリボーンさん。
私を睨むなんてそんな激しくお門違いな。拉致してきたツナさんを恨んでくださいよ。



「俺に指図すんな」

「だからなんであなた私の考えてる事が分かるんですかって!覗き魔か!心の!」

「撃つぞ」

「すみません調子乗りましたすみません」



この馬鹿でかい屋敷に来て数十分、私の体は銃口を向けられるとすぐさま頭を下げるように順応していた。あれ結構しっかり適応力発揮しちゃってる感じ?

でも目の前にいるのはマフィアって事に変わりはないらしく、こんなに爽やかスマイルを浮かべている山本さんですらその仲間だっていうからこの世の中何が起こるか分かったもんじゃない。



「あの…獄寺さんは更にどなたか連れてこられるのでしょうか…」

「んー…取り敢えず今この中にいる奴らは全員呼ぶつもりなんだけどね。いまいち団体行動が出来ない奴らだからな…」

「獄寺に行かせたんじゃ来るもんも来なくなるんじゃねぇのか」

「あ、それはあるかもね。…山本、ちょっと様子見てきてくれるか?」

「おう!分かった!」


そう言い残すと山本さんまでどこかへ消えていき、この空間には私とツナさんとリボーンさんだけという何とも恐ろしい組み合わせになってしまった。

数時間前イタリアの地に降りてこれからの輝かしい生活に胸を高鳴らせていた自分が懐かしい。遠い昔のようにも思える。




「陽呂ちゃん、嫌と言ってもここから逃がす気はないからね?」

「ツナがこう言うんだ。無駄は抵抗はよせ。…尤も俺はこんな女らしさのかけらもないガキには興味ないがな」

「興味ないなら銃口向けんな!それに歳はあんま変わらないはず!」

「うるせぇな」

「ぎゃあ!だからやめてくださいって!!」

「陽呂ちゃんなら適任なんだって。リボーン思い出してみろよ、今までの使用人。骸や恭弥さんにいいようにされたりしてただろ?」

「あれは女の方もその気だったじゃねぇか」

「それに俺達に対して不必要な程の色を使ったりさ。お前だって鬱陶しがってたじゃないか」

「…まぁな」

「…その会話を聞く限り私には色気というか…そういう魅力がないと?そんな理由で連れてこられたんですか?」

「そうだろ」

「リボーン!ったく失礼だろ陽呂ちゃんに…。陽呂ちゃん、そうじゃなくて、俺はキミなら何が合っても動じないでいてくれそうな気がしたからここに連れてきたんだよ」

「いや今実際超動じてますけど」

「それに初めて俺と会った時、避けてたじゃないか。大抵の女の子は俺みたいなのが近くにいたら寄ってくるものなのに」



大した自信だなとか思ってたら、目の前のツナさんの目が嫌に真剣は事に気がついた。




「誰でも良いってわけじゃないんだ。まだ会って少ししか経ってないけど、マスターの店でキミを見てこの子が良いって思った。…それに料理も得意みたいだしね?」

「…料理は、そりゃ…自信がないわけでは、ないです」

「でしょ?…そう固くならなくていい。俺達がマフィアだって事を忘れて、取り敢えずここで陽呂ちゃんの料理を出してみてくれないか?俺達社員を賄うつもりでさ」




ね?と私の両手を握るツナさんの手が優しい温度をしていたから、私は頷くしかなかったんだ。


どうなるか分からないし怖くないと言えば嘘になるけど、少しこの手の体温を信じてみようと思った。






(仕方ない…こうなったら頑張れ私…奮い立て私!!)

(リボーン、陽呂ちゃんも分かってくれたみたいだ)
((…一般人捕まえてすぐマフィアと暮らせってのも無謀な話だけどな))




<09‐ある女の決意‐> Fin.

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