颯爽デイズ
□銀の忠誠
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ツナさんに爽やか過ぎる笑顔を向ける…銀髪?白髪?の男性。
その輝かしい表情を一瞬にして歪ませ、ツナさんの隣にいる私を見た。
…え、ちょ、怖っ!
「十代目…この女は…?」
「あぁ、今日からこのボンゴレで厨房に入ってもらう子だよ。和食料理人の見習いなんだって」
「はぁ…」
軽く…本当に軽ーく私の紹介をしたツナさんは相変わらずの優しい笑顔だったけど、この眼光鋭い男性は私を睨んだままだった。
そらそうだいきなり和食料理人の見習いとか言われましてもね!
何の事だって話ですけどね!
流石にその場の空気に耐え切れず、嫌々ながら口を開く。
『あの…ツナさん…』
「ツナさん?!おい女てめぇ!十代目に向かって何て口の聞き方してんだ!?」
『はあぁぁ?!めっちゃキレてらっしゃる何故!?』
超怖ぇよ!何だよいきなり!!
名前呼んだだけじゃないの!つかどれだけ尊い存在なんだよツナさん…いい加減何者か教えてくれ絶対ついて来ちゃいけない人だったよコレ…!
1人で気味悪い感じにアワアワしていたらツナさんが私の肩をポンと叩いた。
「あはは、ごめんね陽呂ちゃん。驚かせちゃったね?…隼人も落ち着いて。この子には俺がツナさんって呼んで欲しいって頼んだんだよ。今日からこの屋敷で頑張ってもらうからくれぐれも優しくね?」
「…十代目がそう仰るなら…。…おい女。もし十代目に失礼な事してみろ。その時は右腕であるこの俺が許さねぇからな」
『十代目…?ってツナさんの事ですか?何か老舗の跡取りとか…?つか右腕?え?すみません若干話についていけません』
「…十代目…まさか俺達の事知らない女を…?」
「うん。まだ何も話してない。取り敢えずついてきてもらったから」
話についていけないと言っている私を完全放置なお二人。
何コレ。私一体イタリアに何しに来てんだよ。
会ったばかりの人間にシカトされる為にわざわざ海渡って来た訳じゃないと思うんだけどな。
そもそも勝手に話をつけた叔父さんが悪いんじゃないか。え、絶対そうだろ。本当なら今頃あのカフェでイタリア人のお客様に少しずつ日本食の素晴らしさを話してだな…
「……おい、」
『…はい?』
悶々と今日起きた出来事を頭の中で巡らせていたら、銀髪の男性が先程より少しだけ柔らかい口調で話し掛けてきた。
「…いきなり怒鳴って悪かった。俺は獄寺隼人だ。…取り敢えず中に入れ」
『あ、はい。えーと、私は木崎陽呂です』
「この後皆を集めて陽呂ちゃんに自己紹介してもらおうと思ってるんだ。隼人、大広間に皆を集めてもらえる?」
「分かりました」
「じゃ、陽呂ちゃんを中に案内してね。俺はリボーンに話してくる」
「はい」
そう言うとツナさんは「じゃあね、また後で」と笑顔を残して先に宮殿の様な建物に入って行った。
「……木崎」
『?はい、何でしょう』
またしても苦手なイケメンさんに遭遇した事でテンション下がり気味なのがバレないように必死に声を絞りだす。
「…苦労するかもしれねぇが、まぁ…十代目のご迷惑にならないよう頑張れよ」
『……はい』
第一印象とは明らかに違う声色で話す獄寺さん。
その目にほんの少し同情の意味が込められていたなんてこの時の私が知る筈も無かった。
(あの女何も知らされてねぇのか…)
(マフィアと知らずに、か。)
(…全員と顔合わせたら驚くだろうな…)
(…。不憫な奴…)
<04‐銀の忠誠‐> Fin.