颯爽デイズ
□職場提供
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とても人の良さそうな「沢田さん」と呼ばれた男性はカウンター席へと慣れた雰囲気で進んでいく。
…綺麗な髪の色だなぁ…とか高そうなスーツだなぁ…とか一般人丸出しな考えを巡らせていると、ふと沢田さんがこっちを向いた。
「…マスター、あちらのお嬢さんは?」
「あぁ!私の姪でね!陽呂ちゃんって言うんだ。ちょっと頭が残念な子なんだけど…可愛いでしょう?」
「うん、とても可愛らしいお嬢さんだ。…俺は沢田綱吉。このカフェの常連でね。マスターとは仲良くさせてもらってるんだよ」
そう言って沢田さんは私に片手を差し出した。
…うっわめっちゃ美形だ私のモロ苦手タイプ…!
美形=性格最悪というひん曲がった方程式を掲げる私は、明らかに顔を引きつらせ沢田さんの手を握る。
『ここっ…こんにちはっ木崎陽呂です…』
「ふふ…陽呂ちゃん、か。宜しくね?」
『は…はい』
…何だこの背景に花を散らばせたような笑顔。
胡散臭い事この上ねぇよ……
「そうかな?」
『………はい?』
…ん?あれ?
私今声に出してたか?
沢田さんが私の心の声と会話したかと有りもしない事を考えている内に彼は叔父さんと話し始めたからさっきのは気のせいなんだと自己解決。
だって…ねぇ?
有り得ないもんねぇ…うん。
「陽呂ちゃんはイタリアに住んでるの?今までこの店で会った事ないけど…」
『あ、いえ…今日日本から来ました。イタリアは初めてです』
「この子の親父さんが和食の料理人でね。それで陽呂ちゃんも料理人の修行してるんだ!いつかはイタリアで店を出せるようにって。だからこの店で手伝いながら少しずつ日本料理も出していこうって事なんだよ!」
「へぇ…料理人なんだ…」
『まだまだ半人前ですけどね!』
何だか私の変わりに説明してくれた叔父さんに感謝。
無理だわ私にこんな美形と2人でお話なんて冗談じゃない。
…うん。
実に女の子思考から離れてるとか気にしない。
その時、沢田さんが信じられない事をさらっと言ってのけた。
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