妖怪パロディ

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『いいかい、悠李。あの山には山神様がいるから悠李は近寄ってはいけないよ』
そう耳に蛸ができるほど親から言われてきた言葉。私もそれを守ってきた、のに。

「意味分かんねえ、何これ笑えない」

『華神山』そう書かれた看板を目にして頭を抱えた。目の前には山の中へ入るための小さな入り口。私がここにいる理由は、三週間ほど前に遡る。
私の兄はそれはもうめんどくさがりやの私とは違い熱心に呪法の勉強をしたり修行をしたり。そのおかげで期待の新人と言われさらに実力を伸ばし最終的には天才と呼ばれるようになった。
そのまま上京しても陰陽師を続ける兄を応援し、私はもうこの道から外れても問題ないんじゃないかと思っていた。だが

「俺さあ、辞めようと思うんだよね」

久々に家に帰ってきたかと思えば、札などをすべて親に渡した兄がいた。父親はぽかんとしている。それでも気にしないで兄は続けた。

「いや正直陰陽師とか意味わかなくねえ?札とか持ってると女怖がるし……他に仕事は見つけてあるしそっちも上手くいってるから安心して。じゃあそういうことで」

ひらひらと手を振りながら再び家を去って行った兄に、私もぽかんとして何も言えなかった。そしてこの日から、この家の次期頭目は私に決まったのであった。
そして昨日の夜、私は父親に呼ばれた。何の用かと言えばあのバカ兄貴が最後に残した仕事があるらしい。それを私にやって欲しいということだ。

「で、内容は?」
「……華神山に、行って状況報告」
「……なに状況報告って」
「華神山ってまだよく分かってないんだ、だから山神様のこととか、妖怪のこととか」
「お前……!散々あの山には入るな近寄るな言ってたくせに今更……!」
「だってしょうがないじゃん、あいつがさあ!いきなり辞めるとかさあ!大丈夫今のお前なら大丈夫!」
「どっからくんだその自信クソ親父!!」

それでも今日ちゃんとこの山に来ている私はとてもいい子だと思う。誰か褒めてくれ。

「あのバカ兄貴許すまじ。とりあえず……」

札を取り出してから指を少しだけ噛んで血を出した。それから札に血をつける。「金吾」と式神の名を呼んで札を放せば中から式神が現れた。

『はい、主様。何ですか』
「ちょっと先歩いて」
『ええっ!何で僕が……』
「大丈夫だって、妖怪が出たら得意の剣術でこう、……ズバっと!」
『……主様』

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