イナズマイレブンGO

□些細なことだが
2ページ/3ページ



「どうしたんだ?霧野、やたら元気ないな」
「本当ですね。悩み事ですか?」
「悩みだったら聞いてやるから話してみろよ」
「ちゅーか、落ち込んでるとか珍しくて気になるんだよなぁ」
「………、あぁ」

部活が始まる少し前。1人で落ち込んでいる俺を心配した神童や倉間達が話しかけてきた。
正直、自分ではどうしようもないことでもあったから素直に相談することにして俺は悩みを打ち明ける。

「なぁ、変なことを聞くことになるが…お前らはすぐ肌が黒くなる方法知ってるか?」
「「「…………?」」」

倉間、速水、浜野は仲良く首を傾げたが、神童は顎に手をあて冷静に俺に問う。

「なんだ、日焼けをしたいのか?お前はそんなに白いわけじゃないぞ?」
「いや、そうじゃなくてだな……」

あぁもしかして、といきなりひらめいたのは浜野。

「倉間みたいになりたいってことか?何なに?もしかして天馬が倉間を好きって〜?」

その言葉に赤くなった倉間と、嫉妬と殺気を全開にした神童。その神童のオーラに耐えかねて倒れた速水。俺は、ただ溜め息を1つ吐く。

「そうだよ。俺の可愛い恋人の影響だよ。ただ、倉間が好きとは言ってないがな」

恋人をやたら強調して浜野に言うと、ふーんとこれまた楽しそうな顔で口角を上げる。

そう、俺と天馬は恋人同士。それは部の全員が認めていることで、天馬の送り迎えは既に日課だ。
正直、ほぼ入部当初から天馬溺愛の神童は俺ならギリギリ認められるのか何も言わないが、最近さりげなく練習メニューがきついのを気のせいと思いたい。


「なら霧野、天馬はなんて言っていたんだ?」
「昨日帰っている途中に、肌が黒いと汗が光って見えるからすごく格好良く見えると思いません?〜ってさ」

だから倉間先輩につぃ目がいくんだと言っていたことは……流石に教えてやらないが。

「肌が黒いと…?ふむ、なるほど…」

神童、お前絶対今日から日焼けサロン通う気だろ。

「天馬が…、へぇ…」

倉間、お前とは2年の付き合いだがそんなに嬉しそうな顔は初めて見たよ。


「……なんとかならねーかなぁ…?」

天馬の一時の感情でも、それを格好良いと思うのなら俺は彼氏としてそうなりたいと思う。
こんな女々しい考えを天馬が聞いたら笑うかもしれないが、俺はそれだけ好きな人のために尽くしたいと思っているんだ。

「………ぁ、霧野君。天馬君ですよ」
「ん?あぁ……」

いつの間にか復活した速水の視線を追うと、天馬が同じ1年と部室に入って来るのが見える。

「ぁ、蘭丸さんっ!今日も頑張りましょうね!神童先輩も倉間先輩も、浜野先輩も速水先輩も!」
「あぁ、頑張ろう」
「天馬、明日からの俺に期待しろ」

神童、お前は少し雑念を寺にでも行って払ってもらえ。

「天馬、今日も気張っていこうな!」
「天馬君、無理はしないようにですよ?」
「ちゅーか天馬ぁ、今日はもう俺とサボろうぜ〜?」


倉間と速水はまだいい。
とりあえず浜野、お前の練習メニューはむしろキツクされるべきだよ。


「ところで皆さん、何を話していたんですか?」
「お前の彼氏が、昨日肌黒い奴は格好良いと言ったからどうすればいいかって相談してたんだよ」
「バッ……!」

これだから浜野は面倒だ。素直に言うなよ頼むから!

「蘭丸さんが……?」

天馬の視線に、もう苦笑するしかない。そうしたら天馬は真っ赤になって、剣城の後ろに隠れてしまった。

「ぉ、おぃ天馬…っ」
「剣城ぃ…ごめん。ちょっとこのままでいさせて」

チラチラと見える天馬の耳は赤くて、その可愛さに思わず笑ってしまいそうになった。

「……天馬、こっち来いよ」
「いやです。今行きたくありません」
「なら仮にも彼氏の目の前で他の男にくっつくなよ。来い、天馬」

天馬はぶーと頬を膨らましていたが、大人しく俺の腕の中に帰ってきた。
ま、顔は見せてくれそうにはないがな。

「……天馬、どうしたんだ?」
「蘭丸さんが、本当に自分を好きでいてくれてるって分かると嬉しくて…」
「そっか」

ギュッと抱き締めて、クセが強いのに柔らかい髪に頬擦りをする。

可愛い可愛い、俺の天馬。

「いつも、お前を想っているのは当たり前だろ?俺は天馬の何だ?」
「か、彼氏……です」
「よく出来ました」


皆がいる所ではやめてほしいと言われるが、今は我慢出来る気がしない。
未だに天馬を狙う輩は数えきれないほどいるんだ。それを少しでも減らすためにはこれくらいしないとな。


「天馬、俺のこと好きか?」
「はい、大好きで……んっ…」
「………。俺もだよ」



とりあえず神童と剣城。
背後に出かけている化身は死ぬからマジでしまえ。

【完】
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ