イナズマイレブン

□そのままでいい
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「やっぱり無理だろ」
「いーや!絶対やってみせる!諦めなければ出来るんだぁ!」
「……………。」

ある休日の帝国学園グラウンド。ここで円堂は源田に技を教えてもらっていた。休日ということもあってか人はいない。

「いやいや、別にそれが出来なくとも問題ないだろう」
「オレは覚えたいの!」
「気持ちは分からなくもない。だがな、円堂…」
「………。」
「それをやるにはお前の体じゃ無…」
「人が気にしてること言うなぁぁぁぁあっ!」
「困ったな…」

まるで小さな子供のように駄々をこねる円堂に源田は溜め息を吐いた。


こうなったのは、昨日のこと。

「源田ー!」
「円堂、また来たのか?」

たたたっと小走りで近寄り源田に抱きつく円堂。最近円堂は、帝国学園に来ることが日課になっていた。

それは2人が恋人同士だからということもあるが、円堂がゴールキーパーとして源田を見て勉強したいためでもある。他の部員もそれが分かっているが、何故か人を惹き付ける円堂。源田に抱きついたり甘えたりする度に源田には痛い視線がぶつけられる(もう慣れたらしいが)。
丁度これから練習するところだからか、2人の周りに部員が集まる。

「いーよな源田は」
「本当。早く死なないかな?」
「そしたら俺がその彼女もらうのに」
「先にお前らを殺そうか?」

円堂を地面に下ろして部員を睨む源田。佐久間がまぁまぁと宥めながら円堂の隣に立つ。

「落ち着けよ源田。仕方ないだろ?な、円堂?」
「うん?」
「にしても…本当に驚くよなぁ」
「何がだ?」

その呟きに応えたのは源田。佐久間は、円堂の頭を撫でながら源田と見比べて言う。

「源田に比べてこんな小さな円堂がゴールキーパーしてることさ」
「ッ?!」

大きな丸い目を見開く円堂の顔は、衝撃を受けた時のもの。
確かに円堂の両親も背が高いわけではなく、それゆえかどちらかというと小柄な方だ。いくら鍛えたとて幼なじみやエースストライカーのようにはいかず、ゴールキーパーには不向きな体格だが別段気にしてるつもりはない。

…………はずだった。



「ゴールキーパーはボールを止めるのが仕事だから体格なんて気にする必要ないだろう」
「だってぇ…」
「それに」
「?」

しゅんとした円堂の頭をポンと撫でて、源田はひょいと横抱きする。

「げ、んだ……?」
「同じくらいだったらこういうの、やりづらくなるだろ?」
「……ぅう…。ゎかった…」

赤い顔を隠すように、源田の首に腕を回して顔を埋める。源田はふっと笑って、地面に座り円堂を抱きしめた。


「お前はお前のままでいい」
「ぅん…」


暖かな日差しが降り注ぐ、ある穏やかな休日のこと。

【完】
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