□本当に分かってる?
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「ねぇ…サル…。もう諦めたら?」
「ボクもしつこいとは思うけど、君も相等しつこいね。フェイ」
「だって…!ガルシャアもヴァンフェニーも、あまり君に好意的じゃなさそうじゃないか」

サリューは溜め息をついて、フェイに顔を近付ける。

「ねぇ…フェイ。ボクをどう思う?」
「え?」
「肌は黒いし、それに反して髪は白い。暗さを思わせる紫の瞳も持ってる。ボクは不気味かい?」

目を潤ませて見上げるサリューに、フェイの全身が熱くなった。

「そ、んなことはない…!可愛いよ、君は!僕はサルが好きだ!僕だけじゃない、君を欲しがる奴は大勢いる!」
「そう?それは嬉しいね」

彼の答えに満足したらしいサリューは、教室に戻るため再び歩き出す。

「ボクは彼らが好きなんだ。友達だけの良い関係で終わりたくはない」
「なら僕だって…君と友達で終わりたくはないさ。こんなに僕はアプローチしてるのに…」

少しだけ後ろを向いたサリューだが、すぐにまた前を向いて歩く。

「別にフェイのことが嫌いなわけじゃない。ボクがそれ以上に彼らが好きなだけ。それに君は…」
「僕は?」
「あー…いいや。この話はまた今度にしよう…」
「えぇぇぇ?!気になるじゃないか!なに?僕の何が気に入らないの?!」

サリューの出かけた言葉が気になるが、この様子では話してくれそうにない。しかし、また今度ということは話してくれる気はあるそうなので、フェイも気長に待つことにした。

ちなみにサリューが言いかけたのは、彼の二重人格ともいえるような性格の変わりっぷりだ。
彼が本当に二重人格という訳ではないのだが、そうとさえ思わせるのが全てサリュー関連のことである。実はサリュー自身も最近知ったのだが、フェイは誰がどれほどサリューに恋心を抱いているかというのを把握しており、ラブレターや告白に出ようものなら彼の制裁が降されるのだという。そのため、逆に彼さえ認めさせればサリューが手に入ると考える輩も少なくない。
別にどんな屈強な男であろうと戦えば勝てるくらいの強さはあるし、普段から身を守るための警戒もしているのでフェイの行動は無意味ともいえるのだが、恐らく彼なりに守ってくれているのでサリューは口を閉ざしたのだ。

「まぁ2人にフラれたら…君でもいいけどね」
「え?何?僕でもいいって何が?」
「……なんでもないよ」
「あぁぁぁ!また気になることが増えた!!」


そして、同時刻。サリュー達が去った教室ではガルシャアがイライラしたように唸っている。

「うるさいよ、ガルシャア。そんなに気になるなら行けばいいじゃないか。最も、行く意味なんてないだろうけど」
「お前は気にならないのかよ?!」
「だから、うるさいって。大丈夫、サリューはフェイに好意ないから…」
「……あぁ、そうかよ。分かってるさ」
「本当に分かってるのかな?まぁ、君が諦めたてくれたら僕も助かるけどね」
「誰が、いつそんなこと言ったあぁぁぁ!!」
「うるさいって、だから。何度も」

ヴァンフェニーは溜め息をついて、窓の外に小さく見えるサリューを見つめた。
次の時間、体育だったのか。今日はサッカーをするらしい。フェイとは別のチームみたいだ。サリューが点を入れた。得点ボートを見る限り、フェイは動いてないのだろう。点差が開いている。

「ふふっ、見ていて飽きないなぁ」

その独り言でガルシャアも気付いたらしく、窓の外を見る。

「そういえば、お前はどうなんだよ?諦めてくれんのか?」
「まさか。サリューは諦めきれないよ。とても可愛い子だからね」
「へいへい…」

ふと思い出す。
彼らが、サリューに好意を抱いた日のことを。
同時に、サリューが告白してきた日のことを。
ボクは君達に嫁いで世継ぎを産んでもいい、君達が好きだよ。どちらかではなく、両方を選ぶサリューの大胆な発想。一夫一妻という政治にこだわらない、自由なサリューらしさ。彼らは思わず吹き出したものだった。
そこからだ。
サリューが2人を選べないことに文句はないが、親や親戚の手前では紙1枚の戸籍にどうしても正妻というものがある。彼らは、サリューをどちらが正妻にするか賭けて静かな戦いをしているのだ。

「あーぁ、面倒くせぇなぁ…」
「でも、君も僕も少し楽しんでるじゃない?」

ガルシャアは、少し口角を上げるだけで答えた。

「早くサリューを迎えたいねぇ、ガルシャア」
「あぁ」

【完】
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