□さぁどっち?!
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「フェイ!見て、見て!可愛いでしょ〜?」
「どっちが似合ってると思う?フェイ、ねぇどっち?」
「え?ぁ、あの…えっと…」

同じチアガールの格好で朝からフェイに詰め寄るサルと天馬。
同じような顔をした2人が同じ衣装を着てはいるが、性格の違いからか雰囲気がまるで違う。

もはやサッカー部だけでなく校内のアイドルとして人気のある2人がフェイに詰め寄っている事実は当然ながら面白いはずもなく、特にサッカー部からの視線は厳しいものである。
(以前、巻き添えで睨まれた男子生徒が気絶した事件もあるくらいだ)

フェイに至ってはこういったことが度々あることなので慣れもしているが、なるべくならば敵を作らないことが賢い生き方というもの。
確かに2人のことは恋愛対象として見てどちらも好きなため、嬉しいかどうかと問われればハッキリ嬉しいと言える。
けれど、それで敵を増やすのならば答えない方が賢明だろうかと毎回最後はそんな答えに辿り着いて曖昧にしていた。

しかし、今日ばかりは逃げられそうにない。

「フェイ、まさかボク達の気持ちに気づいてないなんてことは…ないよね?」
「今日こそ決着つけようって、昨日話し合ったんだ。だからフェイ……」
「…………。」


怖い。
目の前の天使2人ではなく、その天使を愛するサッカー部員達の視線が……。

これがそこらの生徒ならば、一睨みすれば大抵は逃げるし諦める。
けれど残念ながら、サッカー部員達が持つ恋心は半端でなく強いのだ。

分かりやすい例を挙げるならば、あれだけ真面目で完璧なる紳士と唄われた神童はただの変態と化し、常にクールであるはずの倉間や剣城はよく笑うようになっている(天使限定だが)。

ここ最近、速水に前向きな言動があったり狩屋のイタズラが減ったのも何かが関わっているならば2人のことに違いない。


「ぇ、と………」

フェイは考える。
普段から使っている脳の部分も使わない部分をもフルに動かして考える。

ヤバい。
どちらを選んでも後々でのフルボッコは目に見えた結果だ。
恐らく1人1人が後ろに般若を付き従え、これでもかという制裁を下すのだろう。

かと言って、2人の気持ちには応えなくては失礼だ。

「…………っ」


フェイは決めた。
自分だって男なのだ。
どちらを選ぶにしても、2人と付き合うとはそういうことだ。


「……ならサル、天馬。選ぶよ?」
「「…………。」」

2人が顔を強ばらせ、お互いの顔を見る。
どちらも捨てられる覚悟はある。

2人だって決めてきた。
どちらが選ばれても、ちゃんと諦めるし応援をすると。

「……天馬…」
「……サル…」

2人はフェイの顔をジッと見る。
フェイも2人に応えるため、何人かが後ろで化身やらミキシマックスをしているのを知らないフリをする。


「………僕は、…」
「「………。」」
「僕は、サルと付き合いたい。サル、好きだよ」
「フェイ……」

サルは信じられないような顔をしていたが、徐々に笑顔が広がっていく。

「……フェイ!大好きッ!」

胸に飛び込み、頬擦りをして嬉しさを表す。
天馬はその後ろ、苦笑をするとサルを抱き締める。

「おめでとサル!良かったね!」
「うん!ありがと天馬!」

2人が抱き合うと、ぴょこぴょこと跳ねて喜びあう。

さて、後ろの皆からどう逃げるか……。
そう思いながら、フェイはもう一度サルを抱き締めた。



……ちなみに余談だが、選ばれなかった天馬を励ますという口実で告白をする者が急増した。
大抵はサッカー部に潰されたのだが(笑)

【完】
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