□歌で伝われ!
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「もぅ、可愛くていい歌でしょ?ね、天馬?」
「うんうん!すっごく可愛いと思う!その歌ってアニメの?」
「ぁ、よく分かったね!そう、知名度は低いんだけどさ……」

キャッキャッと2人で楽しそうに話しているのを横に流しながら、フェイはふぅと軽く溜め息をつく。
今朝いきなり2人で家に押し掛けて来たと思えば、そのまま拉致するかのような素早さと強引さでカラオケに連れこまれた。
サルと天馬が交互に歌い、そろそろ1時間くらいは経つだろうか。


「……ねぇ、天馬とサル。そろそろ僕を連れ込んだ理由が知りたいんだけど」
「え?」
「理由?」

2人して同じようなキョトンとした顔をする。それに可愛さを感じて頬が熱くなってしまったフェイは、顔を見られないよう外方を向く。

「ぇ、とさ…ほら、いきなり僕を連れてきた理由!理由もなしには来ないでしょ?」
「あぁ、なるほど」
「えへへ。実はボクが頼んだの☆」

納得したように笑う天馬、キラッとした笑顔を浮かべるサル。どことなく似ている行動は流石というか、なんというか…。

「サルが?一体、どうしたの?何か気まずい相談?」
「やだなぁフェイは。それなら素直に相談するよ」
「なら、何……?」
「え?まだ気付かないの?鈍い男だなぁ君は」

腰に手をあてて溜め息をつくサル。天馬は苦笑しており、フェイはもう首を傾げるしかない。

「ねぇ、フェイ。以前、君は自分で言ったことを覚えているかい?」
「え……?」
「そう。前、天馬とフェイの3人で映画に行ったじゃないか」

それを聞き、あぁそういえば映画に行ったなぁと記憶の糸を寄せ始める。

「その時、ミュージカルのシーンで言った台詞…」
「ミュージカルのシーンで?」

しばらく顎に手をあてて考えていたフェイは、ハッとサルの方へ視線を戻す。
サルは、思い出したようだねと笑った。

「……“歌で気持ちが伝わるって、なんだか感動するね”?」
「そう!それ!!」

サルはズイッとフェイに顔を近付けると、口をゆっくり開く。

「今までに歌った歌、どんな歌だったか分かる?」
「……恋の歌」
「何が言いたいか分かる?」
「……、君は僕のことが好き…?」

サルは少し顔を離すと、照れたように笑う。

「そう!好きだよ、フェイ」
「サル……」

フェイはサルの後頭部を片手で寄せると、もう片手で顎を抑える。

「抵抗はしないの?」
「言ったじゃないか。君のことが好きだって」
「そう」

それだけ言うと、フェイはサルの唇に自分のを重ねる。
天馬は、あーぁ自分は忘れられちゃったかなぁと小声で呟きながら、心の中でサルに拍手を贈る。


『サル、おめでとう』
『ありがとう、天馬』

【完】
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