Caution!!!18R!!!
ウータイ本部基地の第三倉庫の中には二人のほか誰もいなくて、カートをひきずるガラガラ言う音が響き渡る。
ザックスとクラウドは申請した物品のリストを片手にカートを押しながら日常品が山と積まれた倉庫の中を歩いていた。
ザックスの小隊は戦死者も多く重症で後方に送られるものも多かった上、ウータイが慢性的人員不足ということもあり、ザックス推薦によるクラウドの副官就任は実に簡単に認められた。階級もいきなり伍長昇進という形をとった。
ようやくウータイ本部基地に戻った二人は、しばらく基地任務を申し付けられ新しい部屋までもらうこととなった。
ウータイ本部基地の官舎は次々と建て増し、建て増しできたため、迷路のようだ。
ザックスに与えられた部屋は、草ぼうぼうの裏庭のある一番端の俄か作りの部屋で、副官とともに二部屋続きということだ。
今日は入室第一日目ということで、倉庫に支給品を受け取りにきていた。
ザックスは一緒に倉庫に来たのに、点検もせずにカートにただ積み上げてさっさと仕事を終わらせ、クラウドの脇で仕事の邪魔をしたり倉庫内をウロウロしたりしてる。
倉庫の中はひんやりしていて、高い位置にある小窓から差し込む日の光の中、埃がきらきらと舞っている。
「ザックスはいいの?点検しないで。サイズが違うものとかあるかもしれないじゃないか。」クラウドはリストを片手に一点ずつ確認している。
「いいんだよ。着てみて小さければ文句言って替えるから。」
そういわれればそうだが、自分は一つずつ点検しないと気がすまない性格なので仕方ない。クラウドは溜め息をつき地味な作業を続けた。
一時間ほど経ったころ、どうにか点検の終わったクラウドを待ち構えていたザックスはクラウドをせかして新しい部屋へと向かった。
二人に与えられた部屋は急ごしらえの官舎の端にあり、作戦会議室や佐官級の部屋からはかなり離れている。
ザックスはそのことも気に入ってるらしく、
「おっさんやじいさん達から離れてるから色々安心だな!」とご満悦だ。
「何が安心なんだよ。」鍵を開けて荷物を運びいれながらクラウドが聞いた。
「ほら、オマエに色目を使って来られたりしたら不愉快だし、声聞かれたりしてもイヤだろう?」
「何の声だって?」クラウドに睨みつけられ、ザックスはちょっと慌てた。
「イヤ、まあ、ほら、声がね・・・、二人でいると色々・・」
「ザックス・・・オレがそんな声出すか!」
「え??クラウドのそんな声なんて一言も言ってないぞ、オレは。」頬がほてった。全く一々イライラさせる。
クラウドが自室にカートを運びいれると、ザックスも一緒について来た。
クラウドが荷物を引き出しに入れたり、ベッドを整えたりしてる間もザックスは周りをうろついてはバスルームを覗いたりカーテンを開けたり閉じたりして落ち着かない。
「自分の荷物もちゃんと片付けないとダメじゃないか・・・」
そういうとザックスはふふんと笑い、カートをクラウドの部屋に引っ張り込んでくる。
「ザックスの部屋は隣だろうが・・・」
「まあ、見ろよ、ここにドアがある!」
確かに壁に小さいドアらしいものがある。
ザックスがそのドアを開けると、向こう側にザックスの寝室が見える。
「寝室同士がつながってるのか・・・」二部屋つながってるってこういうことだったんだ・・
ミッドガルだったらと思うとゾッとする。何噂されるかわかったもんじゃない・・・
「ザックス!!オレはここで噂を立てられるのはゴメンだからな!!」クラウドが睨むと、ザックスは
「わかった、わかった。オレも注意するって。さて伍長、今日は夕食は部屋で一緒にとろう、この部屋に落ち着いて初めての夜だ。まずは作戦を練らないと!」
「了解しました、中尉。で、作戦とは?」
「攻略作戦だ。まあ色々。」ザックスは楽しそうに笑うと素早くクラウドの耳たぶにキスをして自分の部屋に荷物を押して行った。
ザックスが自室に引き上げてから、クラウドはゆっくり自分に与えられた部屋を点検した
うん、悪くない。自分の年でこの部屋が与えられるのはなんと言ってもザックスのお陰だ。副官という位置どころはなかなかいいかもしれない。
ザックスの事務的雑用をごっそり押し付けられそうな予感はするが。
ここウータイ基地はともかく色々破格のようで、やりやすいとザックスも言っていた。
一般兵士の4人部屋じゃなくてよかったけど、ザックスと続き部屋か・・・
クラウドは不安だった。
やっとザックスと一緒にいられることになり、ひきちぎられた半身が見つかったような安堵感はあるものの、次に来るものに漠然とした不
安感を覚えていたのだ。
ザックスに触れたい。あの小麦色の肌に頬ずりしたい。ザックスのいかにも健康な雄らしい匂いに包まれるとほっとする。
でもその後は??
何が待ってるのかぼんやりとはわかってるつもりだ。
自分は期待と怖れの両方の気持ちの間を揺らいでるのだろう。
(まるで処女だ。)クラウドは一人で苦笑した。
(まあ、ザックスにまかせよう・・・)クラウドはもう考え悩むのは止めて、片付けに専念することにした。
ザックスが士官用食堂でなんと言ったか知らないが、夕方になるとザックスの部屋に夕食が二人分届けられた。
その上どこからか配給券をちょろまかしてきたらしく、ワインまである。
クラウドは呆れてどうしたのか聞いたところ、
「オレの誕生日だって言ったんだ。」とのことだ。この分じゃ一体ここにいる間に何回誕生日をする気だろう・・・
「さて、オレ達の生還を祝って、今日はゆっくり祝杯をあげよう。」
テーブルセッティングをして(ザックスはこういう事はマメだ。)ワインをあける。
夕食は軽くソテーしたチキンに、ウータイ産の香草を煮込んだソースがかかっているものと、ポテトのサラダだ。
スープは「ソイソース」味とのことで、これもウータイ風だ。
「クラウドが料理した雉が食いたい・・・」ザックスが少々固くなっているチキンにナイフを入れながらつぶやいた。
「あんな野蛮な料理がいいんだ・・」クラウドが言うとザックスは。
「オレが今までで食べた中で一番美味いものだ。」そういってじっと見つめた。
またこの反則技だ・・・
ふざけていたかと思うと急に真面目になる。胸がつまって思わず顔をそむけた。
「そのうち裏庭にでものこのこ出てくるマヌケな雉がいたら撃ってやるよ。」そういって勢いよく鶏にナイフを入れると口に放り込んだ。
ザックスはにっこり笑うと片手をそっとクラウドの頬にあてた。
「ここにこうやってお前といるのが嬉しい。」
もうやめてくれ、オレは耐えられない・・・なんでそうやってさらりと剥きだしで無防備なんだ・・・
オレは、オレは・・・なんて言ったらいいのか全然分からない。
クラウドは顔をあげると
「バカ。」と言った。
ザックスは満面の笑みでその言葉に応えた。
髪をくしゃりとつかむと、「オレ、お前にバカって言われるの好きだ。」と言った。
「本当にバカじゃないか・・」
頬に血が上るのを感じながらワインを煽ったものだから、さらに顔がほてってきた。きっと今かなり赤面してる。
ザックスがこっちを嬉しそうに見てるから。
どうしても自分は気持ちをうまく伝えられない。自分も今一緒にいることがとても嬉しくて、もうこれは恋心極まった状態なんだと思うが
口を開くと「バカ・・」くらいしか出てこない。他に言い様があるじゃないか・・・
「クラウド、シャワー一緒に浴びない?」ああ、また来た、直球が。
「イヤだ。ヘンタイ。」バカの次はヘンタイだ。なんてヒドイことをオレは言ってるんだろう。ザックスがヘンタイならオレもそうだ。
ザックスはこれは少々こたえたらしく、期待したご褒美がもらえなかった犬みたいにがっくりしてる。
なんだか悪い事をした気分になり
「大体ここのシャワー室は狭いんだ。ザックスみたいなデカイのと入ったらきつくて髪も洗えない。」とうつむいて言い訳して、立ち上がった。動悸がしてきた。苦しい・・・ともかくちょっと落ち着きたい。
「オレは自分の部屋でシャワーを浴びるから、ザックスも自分の部屋で浴びるといい。じゃあ。」と自分の部屋に引き上げようとした。
ザックスは立ち上がって歩きかけたクラウドの手をとると、
「シャワー浴び終わったらこっちに来いよ。もう一本ワインあるから一緒に飲もう。」そういいながら軽く抱きしめ髪に顔を埋めた。
クラウドは溜め息をついて二人の部屋の間のドアを通ると自分の部屋に戻った。
このシチュエーションは・・・まるっきり新婚初夜じゃないか・・・
部屋のシャワーは俄か作りのバスルームにしては性能がよく、温度調節や水圧調整もキチンとできる。
熱い湯を頭からザーザー浴びながら、思い悩む心を洗い流そうとした。(いいんだ、ザックスとやっと一緒にいられる。
他は何があろうとどうでもいいんだ、オレには。)
ともかくいつまでもシャワー室にこもっててもしょうがない。
ドアを開けると蒸気がもやっと部屋のなかに逃げていく。窓からは初秋の夜のかぐわしい風が入ってくる。
タオルをまきつけたまま窓辺に寄り、そっと辺りを見回し耳を澄ます。。幸いここの部屋の外は林になっていて、覗かれる心配はなさそうだ。
風呂上りに何を着ようか引き出しをかきまわし、結局グレイのジャージを見つけそれを着込んだ。
(これでザックスの意気が少し挫けるだろう・・)スリッパをつっかけ、壁にある小さいドアをノックした。
「ノックなんてしないでいいよ。」
部屋に入るとザックスはタオルを巻いたままの格好でベッドに座り、もう先に飲んでいた。
ベッドサイドにはなにやら色々置いてある。
「ジャージか・・・」ザックスはクラウドを上から下までじろじろ眺めると
「そそるなあ・・・」と言った。
「バカ!!、ヘンタイか!!オマエは!!」また言ってしまった・・
ザックスはちょっと目を細めると、クラウドにワインのグラスを渡し、自分の隣に座るように少しずれた。
仕方なく隣に座る。さっきまでザックスが座っていたところが温かい。
洗いたての髪の匂いがしてくる。
「臭くないザックスなんて久しぶりだ・・・」クラウドが言うとザックスはにやりと笑った。
「クラウドはいつだっていい匂いだ。」
ザックスの手が伸びてきてジャージの上着のファスナーをはずす。
「いいなあ、ジャージ・・・最高だよ・・」そういいながら喉元に口付けしてきた。背筋を快感が一瞬走った。案外はやく攻略されてしまうかもしれない・・・
そっと胸元をくつろげると片手を差し入れ、後ろから抱きすくめるようにしてベッドに倒れこんだ。
「女と寝たことあるか?」いきなりの意外な質問に思わず、
「ある。」と答えてしまった。
「いつ?」
「ウータイに来る少し前。」
「どうだった?」
「あっけなかった・・」
「玄人か?」
「ああ。」
ザックスは左手で乳首を弄びながら耳朶を軽く噛んだ。襟足を鼻でくすぐると首筋をさらに噛む。ジャージの上着を脱がされた。
ワインも手伝って、少し朦朧としてきてる。気づくと息も早い。
「男と寝たことは?」
「ないよ。」クラウドは振り返るとザックスを射すくめるような眼差しでみつめた。
「オレもない。」ザックスは答えると体の向きを変え、クラウドを強く抱きしめた。
「うまく出来なかったら悪い・・・」
その態度が大きな熊が神妙にしてるようで妙に可笑しく、クラウドは思わず笑ってしまった。
「いいよ、二人でゆっくりこうしてるだけでも。」そういうと頭を抱きしめた。
ザックスの髪が鼻に触れくすぐったい。ザックスの唇は胸元から徐々に上がってきてクラウドの唇に達すると軽くついばんだ。
ふたたびゆっくり口付けすると、温かい舌が侵入してくる。軽く口を開きその舌を受け入れる。やさしく動く舌におずおずと自分の舌で迎えいれるように応えると、強く吸いあげられる。ザックスに強く抱きしめられほとんど息もつけない。唾液が絶え間なく口の端から流れ出す。気が遠くなりそうになった時、唇が離れた。今度は柔らかい舌が喉から唇に向かって舐めあげてくる。流れた唾液を味わうようにねっとりと舐める。
「あ・・はぅ・・・」抑えきれなくなり声がでると蒼い瞳が覗き込んでくる。
「我慢しないで。オレ以外誰も聞いてないんだから。」もう何も考えられなくなり微かにうなづく。
「ダメだ・・・キスだけで終わりそうだ・・」あえぎながらうっすら目を開けてザックスを見ると、
「ああ・・・この顔・・・クラウドのこんな顔を見るのは世界中でオレただ一人だ。」そう言いながら性急な手つきでジャージの下を脱がせた。
「まだ、これからだ。」
ザックスと目が合う。瞳の奥に吸い込まれそうな情欲の炎がある。自分という存在が火をつけた・・・
そのことに満足するとともに自分自身の中にも湧き上がってくる熱い思いにどうしていいかわからず、ザックスの手でなで上げられる皮膚の下に灯った火照りにうめき、思わず背を向けた。
シーツに顔を埋め、息を整えようとしたが無駄な努力に終わった。
白く滑らかな背中はなだらかな曲線を描き、腰へとつながる。腰に天使の笑窪がある。
ザックスが背中に体を密着させると、体の熱がじんわり伝わる。片手を胸の下に差し入れられた。すでに固いちいさい乳首をそっと指先で円を描くように愛撫される。もう片方の手は腰の下に入れ、クラウド自身のものを軽く握る。それはすでに熱く固くそっと先を触るとうっすらと濡れていた。
動物の交尾のように首筋を噛んで背中から体を押さえつけられる。息はますます荒くなる。汗が互いの体の間で交じり合い、どちらが汗をかいてるのかもうわからない。
クラウドが軽い呻き声を上げた。
ザックスはベッドサイドに手を伸ばすとガラスのボトルを掴み、中身を手に空けた。
額に汗で金髪をはりつかせたクラウドが振り返ると
「何、それ?」とかすれ声で聞いた。
「グリセリン。ここの倉庫からくすねて来た。」
倉庫内で落ち着きなくウロウロしてた時、こんな物を探してたのか・・・
ザックスはグリセリンを手の平に取り自分の起ち上がったものに塗ると、クラウドの腰の辺りに残りをぶちまげた。
「うわ・・・ぬるぬるする・・・」
「だからいいんだよ・・・」
「力抜いて・・・」と耳元でささやく・・
ゆっくりと少しずつザックスが滑り込んで来る。肉の固まりの感触に圧倒される。徐々に動きが激しくなると、体内に不思議な感覚が生じてきた。粘膜の奥底に何かが潜んでいる。止められない、正体もわからないのに翻弄される。それは腰の奥から背中を伝って這い上がり痺れるような陶酔感をもたらした。
「はぅぅ・・はぁはぁ・・ん・ん・・・」甘くかすれた声がさらに互いの欲望を高揚させる。
ザックスは痙攣するような快感の波に襲われ果てた。腹の下のクラウドの体がびくりと跳ねた。一緒に終わったようだ。
荒い息を整え、互いに軽い口付けを交わす。
汗は互いの間を流れ、動悸に胸が跳ね上がりそうだ。
抱き合ったまましばらくじっとしていた。
クラウドはふと半身を起こすと
「ベッド、すごいことになってる・・・」眉をひそめてそう言った。
ザックスはクラウドを片手で抱きしめ、
「おい、それがオレたちの記念すべき愛の行為の後の最初の言葉か??もっと何かないのか?」と呆れたように言った。
「何が愛の行為だよ・・・ケダモノじみてた・・・オレも・・・」
「キライか?」ザックスが顔中に口付けする。額、頬、鼻、顎、そして唇に。
クラウドは両手でザックスの顔を包み込むと
「ザックスって本当にしつこくてうざいな。」と溜め息交じりに言った。
「でも好きだ。」そう言いいながら両手でそっと抱きしめた。
「神様、クラウドがオレの腕の中にいる幸せに感謝します・・・」ザックスが小さな声でつぶやいた。
クラウドはザックスに頬ずりすると瞳を閉じた。
月は中天にかかったのか、部屋の中は銀色の光が満ちている。
遠くで山犬の遠吠えか、低くひきずるように響き渡る。
二人は互いの腕の中で眠りに落ちた。
ウータイの夜は更けていく。
ふくろうの声が遠くから微かに聞こえた。
完(2008/9/9)
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