Short2

□星屑サテライト
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星屑サテライト















「……一年、持ちこたえられれば良い方でしょう。」





星クズは11年前、お医者さんにそう宣告された



全然悲しくなんかなかった


死ぬって、よくわからないし。




ただ、もう冬獅郎たちと遊べないんだって


お母さんにそう言われた時が一番辛かった















その後、すぐ引っ越して



療養のために田舎に移り住んだ



…といっても、ずっと病院のベッドの上だったけれど。






「…あいたい……」




ただそれだけなのに。

ヒューヒュー鳴るこの呼吸じゃ、それすらも許されないわけで



何度、病院の枕を涙で濡らしただろうか。






「…7歳のお誕生日おめでとう。
何か欲しいものとかある?
お母さんとお父さん、何でも買ってあげるわよ。」





朦朧とする意識の中、聞こえた声


自分の呼吸音でうまく聞き取れなかったけれど

私、一年以上生きられた



そう思った。



でも、それと同時に



死んだらこんな幸せも、

お父さんも

お母さんも


桃も



…冬獅郎とも会えなくなる




誰もいなくなる



違う、いなくなるのは私。



この世界で、私が生きた小さな世界で



私だけが皆の中から消えていくんだ


真っ暗になるんだ。






「おと……さ……おか……さ……っ」







そっか




これが、“死ぬ“という事だったんだ



みんなから、消えてしまうこと


怖い



体が震えるほど、怖い










「……お願い………と…しろ…と、…ももには……言わな……で………


わたしがいなくなっちゃうこと……言わない…で………」








生きていて欲しい




あなたたちの中の私には




たとえ“私“の呼吸が止まったとしても















お父さん、お母さん



ありがとう



私がいなくなったら、もう泣かないで




知ってるよ



病室を出たらお母さん、いつも泣き崩れてるの




もう、二人が悲しくないように


わたしはまた二人の子供に生まれてきます


だからもう泣かないでね














桃。


優しい桃…私の親友で、お姉ちゃんみたいな存在


ほんとはもっと一緒にいたかった

もっと遊んで

一緒に成長して

いつか隣り合わせに大きなお家を作って、毎日一緒に遊ぶの



いつか、またいつかの、遠いいつかのお話になるかもしれないけど


きっとその時は、もっと一緒にいられるような気がするんだ


ずっと、おにぎり座でいられるような気がするんだ




















冬獅郎…



私ね、冬獅郎に秘密にしてたこと沢山あったよ



冬獅郎のお気に入りの本にジュースをこぼした事


冬獅郎の筆箱に落書きした事


冬獅郎のポケメン人形の腕を壊したこと



冬獅郎のことが…







冬獅郎のことが大好きだったこと








…嫌




死にたくない



怖いよ



冬獅郎たすけて



冬獅郎



冬獅郎












あいたい……



あいたいよ……――――


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