予告状

□第8話
1ページ/3ページ












「杏珠。何かいい事でもあった?」



帰ろうとすると、突然クラスの子にそう尋ねられた


なんでも私は帰る時はいつも暗いらしいが、最近はごきげんなんだって。



そうかな。確かに心当たりはあるけれど。





ドンッ!!



「わぁっ!?」



帰り道で突然、ランドセルを背負った女の子が私めがけて突進してきた



「ご、ごめんね!大丈夫だった!?」


少女「う…っ…ひっく…」


「わっな、泣かないで〜!どこか痛い?」




しかし女の子は首を横に振った。


その時、後ろから女の子と同い年くらいの男の子たちの声が聞こえた




男の子「理恵の凶器が落ちてるぞー」


男の子「気をつけろ!触るとケガするぞ〜!」



(凶器…?)



少女「違うもんっ!パパの作ったおもちゃだもん!」


男の子たちが踏み付けている"凶器"とやらは女の子のものなのかな。


そうならこの子のパパが作った大切なおもちゃに何て事するのよ、あの子たち!




私は男の子たちに蹴飛ばされている"おもちゃ"を取り上げて、男の子たちに一喝。





「こらーっ!女の子1人に寄ってたかって恥ずかしくないの!?」




そう怒鳴ると、男の子たちは一目散に逃げ出した



依然と泣きつづける女の子に、私は取り返したおもちゃを顔の前に突き出す


そして声の調子を変えて、女の子に話しかけた



「あ〜ゴホン。…理恵チャン、ぼくは無事だよ!だからもう泣かないで?」



そう、おもちゃになったつもり。…小学生に対しては少し子供だまし過ぎるかな…




女の子「…ふ、ふふっ…あはは…」



よかった…笑ってくれた




「はいっ。可愛いね、そのおもちゃ。」



女の子「…うん!!///」



「ふふ…それじゃあね!」


女の子「ありがとう、お姉ちゃん!」



ポンと女の子の頭を撫でると、女の子は笑顔で駆けて行った














**********




私はマンションまで着くと、真っ直ぐメールボックスを開いた



メールボックスを開ける瞬間の気持ちは、今までみたいな不安とか緊張とは違う



何年も待ち続けた両親からの手紙は相変わらず来ないけど、



最近の私はちょっとだけ元気で、ちょっとだけ幸せ。




今日もメールボックスの中には小さなメモ。



(その幸せをくれてるのが、あのタラシが書いたメモっていうのがシャクなんだけど…。)


「えーと、なになに…


「「グラタン食べたい」」




メモを読み上げる私の声と同時に、あのタラシ男の声も被さった



そして背中に体重がかかる…というか抱きしめられた





「グラタンって…なにコレ…そして何してんの。」



稚「抱きしめてんの。ね、グラタン作ってよ。俺一人暮らしだし。」



「…何で私が。とにかく離してよ変態っ。」



稚「グラタン作ってくれるなら。」



「はぁ…グラタンなら…後ろの誰かさんの方が上手よ。」




私がそう言うと、稚空は恐る恐る後ろを振り向いた









都「ち〜あ〜き〜!?」



鬼のような形相の都に、稚空は顔を引きつらせる



稚「よ、よう…都…



都「離れなさいよーーっ!!」







───────────

────────

───…



まろんが登場したことで都の怒りはやっと収まり、エレベーターで部屋の階まで上る。



都「私が美味し〜いグラタン作ってあげるね♪」


ま「あたしも行っちゃおーっと!」


都「ちょ…誰がまろんの分まで作るなんて言ったのよ!?」


ま「なによー、いいじゃない!


稚空にべったりくっついて、まろんを睨む都。



(…いいな…グラタン)



ふぅ…とため息をつくと、稚空はそれに気づいたみたいでニヤリと笑う



稚「杏珠も食べに来たいのか?」



「んなっ!?だ、誰が行きたいもんですか!///」




うぅ…私の意地っ張り。



でも…行かなくて正確かも。


都の家、にぎやかで好きだけど…部屋に帰ったとき余計にさみしくなるんだよね…







稚「やっぱ俺、杏珠が行かないなら行かない。」



稚空の言葉に、都とまろん、私は目を丸くする




ま・都「「…杏珠〜っ…」」




キッ!と二人に睨まれる



こ、殺される…。



「い、行きます行きます!!




私は焦ってそう言うと、稚空はニヤリと笑った



…なに、今の。


もしかして私がほんとは行きたいの分かってて、わざと都にけしかけたの…?




(まさか…あんな変態男がそんな事するはずないよね…)






都「じゃ、早く三人ともカバンおいてきなさいよ。」



ま「はーい、後でね〜」





私たちはいっせいに部屋の扉を開く





すると部屋の玄関にはティナが待ち構えていた



…『仕事☆』という立て札を持って。






私は開いた扉をおもむろに閉めると、なぜか隣の都や稚空、まろんも同時に扉を閉めて…一同、同じセリフを吐いた




「「「「ごめん…用事思い出した…」」」」




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ