予告状
□第8話
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「杏珠。何かいい事でもあった?」
帰ろうとすると、突然クラスの子にそう尋ねられた
なんでも私は帰る時はいつも暗いらしいが、最近はごきげんなんだって。
そうかな。確かに心当たりはあるけれど。
ドンッ!!
「わぁっ!?」
帰り道で突然、ランドセルを背負った女の子が私めがけて突進してきた
「ご、ごめんね!大丈夫だった!?」
少女「う…っ…ひっく…」
「わっな、泣かないで〜!どこか痛い?」
しかし女の子は首を横に振った。
その時、後ろから女の子と同い年くらいの男の子たちの声が聞こえた
男の子「理恵の凶器が落ちてるぞー」
男の子「気をつけろ!触るとケガするぞ〜!」
(凶器…?)
少女「違うもんっ!パパの作ったおもちゃだもん!」
男の子たちが踏み付けている"凶器"とやらは女の子のものなのかな。
そうならこの子のパパが作った大切なおもちゃに何て事するのよ、あの子たち!
私は男の子たちに蹴飛ばされている"おもちゃ"を取り上げて、男の子たちに一喝。
「こらーっ!女の子1人に寄ってたかって恥ずかしくないの!?」
そう怒鳴ると、男の子たちは一目散に逃げ出した
依然と泣きつづける女の子に、私は取り返したおもちゃを顔の前に突き出す
そして声の調子を変えて、女の子に話しかけた
「あ〜ゴホン。…理恵チャン、ぼくは無事だよ!だからもう泣かないで?」
そう、おもちゃになったつもり。…小学生に対しては少し子供だまし過ぎるかな…
女の子「…ふ、ふふっ…あはは…」
よかった…笑ってくれた
「はいっ。可愛いね、そのおもちゃ。」
女の子「…うん!!///」
「ふふ…それじゃあね!」
女の子「ありがとう、お姉ちゃん!」
ポンと女の子の頭を撫でると、女の子は笑顔で駆けて行った
**********
私はマンションまで着くと、真っ直ぐメールボックスを開いた
メールボックスを開ける瞬間の気持ちは、今までみたいな不安とか緊張とは違う
何年も待ち続けた両親からの手紙は相変わらず来ないけど、
最近の私はちょっとだけ元気で、ちょっとだけ幸せ。
今日もメールボックスの中には小さなメモ。
(その幸せをくれてるのが、あのタラシが書いたメモっていうのがシャクなんだけど…。)
「えーと、なになに…
「「グラタン食べたい」」
メモを読み上げる私の声と同時に、あのタラシ男の声も被さった
そして背中に体重がかかる…というか抱きしめられた
「グラタンって…なにコレ…そして何してんの。」
稚「抱きしめてんの。ね、グラタン作ってよ。俺一人暮らしだし。」
「…何で私が。とにかく離してよ変態っ。」
稚「グラタン作ってくれるなら。」
「はぁ…グラタンなら…後ろの誰かさんの方が上手よ。」
私がそう言うと、稚空は恐る恐る後ろを振り向いた
都「ち〜あ〜き〜!?」
鬼のような形相の都に、稚空は顔を引きつらせる
稚「よ、よう…都…」
都「離れなさいよーーっ!!」
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───…
まろんが登場したことで都の怒りはやっと収まり、エレベーターで部屋の階まで上る。
都「私が美味し〜いグラタン作ってあげるね♪」
ま「あたしも行っちゃおーっと!」
都「ちょ…誰がまろんの分まで作るなんて言ったのよ!?」
ま「なによー、いいじゃない!
稚空にべったりくっついて、まろんを睨む都。
(…いいな…グラタン)
ふぅ…とため息をつくと、稚空はそれに気づいたみたいでニヤリと笑う
稚「杏珠も食べに来たいのか?」
「んなっ!?だ、誰が行きたいもんですか!///」
うぅ…私の意地っ張り。
でも…行かなくて正確かも。
都の家、にぎやかで好きだけど…部屋に帰ったとき余計にさみしくなるんだよね…
稚「やっぱ俺、杏珠が行かないなら行かない。」
稚空の言葉に、都とまろん、私は目を丸くする
ま・都「「…杏珠〜っ…」」
キッ!と二人に睨まれる
こ、殺される…。
「い、行きます行きます!!」
私は焦ってそう言うと、稚空はニヤリと笑った
…なに、今の。
もしかして私がほんとは行きたいの分かってて、わざと都にけしかけたの…?
(まさか…あんな変態男がそんな事するはずないよね…)
都「じゃ、早く三人ともカバンおいてきなさいよ。」
ま「はーい、後でね〜」
私たちはいっせいに部屋の扉を開く
すると部屋の玄関にはティナが待ち構えていた
…『仕事☆』という立て札を持って。
私は開いた扉をおもむろに閉めると、なぜか隣の都や稚空、まろんも同時に扉を閉めて…一同、同じセリフを吐いた
「「「「ごめん…用事思い出した…」」」」
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