仙人掌

□水を降り注いで 愛を降り注いで00
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「あつい…。」


ああ、何度この言葉を呟いただろう。

今年は冷夏だってニュースでも何度も言っていたはずなのに、どうしてこうも暑いのか。

扇風機の前で口を大きく開き、声を発してみるが、すぐに口の中が渇いて逆効果のようだ。



悲しいかな、華も恥らう女子高生なのに、夏休みになっても彼氏も居らず家でだらだら過ごす日々。
そんな何気ない今日という日がこんなに猛暑日だなんて…。



なんだって、こんなときにエアコンが壊れるのか。神様はあたしに恨みでもあるらしい。



何度も暑いと繰り返すとさらに部屋の温度が上昇したような気がした。



「ふゆ…。今すぐ冬に行きたい…。」

夏になると必ずこの言葉が口走ってしまう。あの冬の寒さが恋しくなってしまうのだ。

「ふゆ…雪…寒い…。」



今この瞬間に訪れてくれたらどんなに嬉しいか。

発した言葉も虚しく、蝉の声はどんどんとうるさくなりあたしの頭のなかで反響する。



「冬…誰か冬にあたしをつれてって…」



暑さで朦朧とする頭のなか、冬に、ただ冬に行きたいという思いで一杯になり、あたしは目を閉じた。



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