Ge×3

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18000Hit*ピョン丸様キリリク











酷い夢だった。

仲間が大勢傷付いて、
苦悶の表情で倒れている。
そしてそれを嘲笑う、
敵の高らかな笑い声。

夢のはずなのに、
僕の周りには真っ赤な
血が香っていた。

そして…



『蒼兄さん…!』



夢の中で血に塗れ、息絶えたのは、
外ならぬ僕の大好きな貴方。



そんな酷い夢、そう夢だった。
夢なのに僕は、恐かった。








眠りに落ちた夢








目が覚めた部屋の中は、
血の臭いも無ければ、
明かりも火の気も無かった。

周りには父さんも、
猫娘も鼠男も、いない。



「僕は…」



目を覚ます前、
僕はぬらりひょん達と戦っていた。

そして勝った後、此処で
眠っていたと考えれば、
僕はどうやら気絶していたようで。

動かない体に、眼球だけを
動かせば、僕の隣には蒼い影。



「あおにいさん…」



座ったまま舟を漕ぐ貴方を、
渇いた唇で呼んでみる。

すると僕は、安易にその眠りを
解いてしまったようで。
蒼兄さんの丸い目が、僕を見た。



「っ…悪ぃ。うたた寝
しちまってたみてぇだな。」

「あ…」

「おっと、起きるなよ?
傷は浅くねぇからな。」



起きようとする僕を制して、
蒼兄さんは僕の額から手ぬぐいを
取り、また濡らして乗せた。

ひんやりとした感覚から、
僕は自分が常より熱があることを知る。



「まだ傷は痛むか?」

「いいえ、あまり…」

「そうか、よかった。」



安心して笑った蒼兄さんの顔には、
薄く疲労の色が伺えて。
よく見れば額には、
汗の粒さえ見える。
月にそれがキラキラと、
異様に綺麗に見えた。



「…兄さんは?」

「え?」

「蒼兄さんは…背中、痛みます?」



僕は覚えていた。
否、忘れられない。

あの戦いの中で蒼兄さんが
僕に応戦したために、
背中を斬られたことを。

もしかしたらあの夢は、
あの記憶からの罪意識なのかな…



「余計な心配すんな。」



ぽん、と布団の上から
僕の胸元を包む掌。
暖かくて、安心する。

蒼兄さんは「もう大丈夫だ」
と言って笑ってくれる。
まるでさっきの夢を、
自分も見ていたみたい。





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